本書は19世紀にライプニッツやデカルトなどの未刊行の文書を編纂したフーシェ・ド・カレイユによって編まれた新発見のエリザベト王女の書簡などをはじめて世に紹介した資料集である。
デカルト(15961650)と長きにわたって多くの書簡を交わし学的交友を深めたことで知られている「ボヘミアの王女」エリザベト(161880)。彼女はどのような女性であったのだろうか。エリザベトの一家は三十年戦争に巻き込まれ亡命生活を余儀なくされた。その中で心のよりどころとなったのがデカルトとの書簡であった。そこでは心身問題,道徳や実践的世界観,セネカやマキャヴェリの解釈,情念の処理などが取り上げられ,エリザベトの反論を通してデカルトの思索が成熟したトピックも多かった。
また書簡でエリザベトは弟の改宗など家族の問題や自分の健康に関することなどを自身の身のまわりの悩みを打ち合けてもおりエリザベトの人間的な側面が垣間見れる。
第一部は16431646(一部1647)年のデカルト書簡の要約と,それに対するエリザベトの返信16通からなる。第二部には,16461649年のエリザベトの書簡9通と,スウェーデンのクリスティナ女王の書簡2通が含まれる。「エリザベトの最期・ヘルフォルト女子修道院長」と題された第三部は,デカルトの死後,エリザベトの後半生16521680年のエリザベトと兄プファルツ選帝侯との往復書簡,妹ルイーゼやウィリアム・ペンとの書簡19通が紹介される。本書は運命に翻弄されながらも学問・信仰に誠実に向き合ったエリザベト王女の生き方をうかがい知れる貴重な資料。