音楽家・河合拓始の第一詩集
これは「音」である。
実際に声として音になったさまを
思い描く。
音楽と通底しているのかもしれない。
2012年から書き継いでいる「何か、十一篇」の第一~第七集に加え、長編詩「赤い川の流れるほとりで 自転車行商のおじいさんから 真っ青な羊羹をもらう話」ほかを収める。
ゆっくりとしなうように
ひとりが腕を上げると
ほかの人もだいたいがそれに続く
風のざわめきが急に静かになる
こころの涙が姿を変えた岩
そこにひとりひとり座って
用意した泉水を呑み干したら
岩を荷物に入れて持ち帰るのだ
住居に帰ったら海か川に浸して汚れを
よく落とす あるいはそのまま放置する
レム睡眠の波間にわたしたちが漂うとき
ひっそりと岩は光りはじめて
誰も見ていないときに
遠くから花々とつながり合うだろう