(前言より)
本書は、清代の満洲語教材『tangg meyen(ー百条)』と同じ内容を異なる言語や文字で記述した諸本について、それぞれをー句ごとに対照させたテキストである。
『tangg meyen』の tangg とは百、meyen とは段落、条文の意であり、全 100 話からなる満洲語の会話が収められている。この書は本来満洲語だけのテキストであった が、満洲語と中国語の対訳、モンゴル語と中国語の対訳 、満洲語とモンゴル語の対訳 、満洲語とモンゴル語と中国語の三言語対訳 、さらには英語訳を付して中国語の教科書になるというように、1819世紀の間に様々な言語と文字へと姿を変えていく。この資料群は、清代の北京を舞台とした言語と文化の接触と交流を語る上で欠 くことのできない重要性を持っている。
本書では、『ー百条』系に属する様々なテキストを対照の形で示すことによって、諸本の成立過程と継承関係を探るための基礎資料を提供する。本書によって、我々はいかにして『ー百条』の中国語訳、モンゴル語語訳、英語訳が作られたか、またそれぞれの言語に対してどのように手が加えられていったか、といった点をつぶさに窺うこと ができるであろう。