ブドウ栽培史に大変革をもたらしたシャインマスカット。需要が大きく、安定価格、生産拡大が続いている。このシャインマスカットを親にした新品種の開発が各地で進められているが、著者の志村富男さんはシャインマスカット系の次世代品種育成の牽引車的な存在である。
志村さんはこれまでシャインマスカットの「大粒、種なし、皮ごと食べられる」という持ち味を生かし、紫黒色の「富士の輝」、鮮紅色の「美和姫」、「マイハート」、赤紫色の「クイーンセブン」、黄緑色系の「雄宝」、「ほほえみ」、「天晴」などの有望品種を作出。また、野生種サンカクヅルを親にした醸造用ブドウの「富士の夢」、「奇跡の雫」なども作出している。なお、大手ワイナリー在職時代に開発したレインカットの覆い、退職後に考案したグレープガード装置は画期的な栽培方式として各地で導入されている。
本書では著者のこれまでのブドウの新品種作出、栽培技術開発、ワイナリー指導などの取り組みを紹介しながら、ブドウ栽培の醍醐味と可能性を探る。