見開き一篇 四季のショートエッセイ 全九十二編
考えごとも仕事もしばし忘れて、窓の外に眼を向けよう-
あたまを休めて珠玉のエッセイに触れれば、また良いアイデアが浮かびます・・・
(筆者あとがきより)
はじめての雑誌を手にすると、まず裏の編集後記をのぞく。おもしろそうなら前へまわってながめる。いい加減なことの書いてある後記なら、縁のないものとあきらめる。後記のないものははじめから相手にしない。いつからかそういうクセがついている。
編集後記から見ていくのは、いってみればよその家へ勝手口から入っていくようなもので、恰好はよくないが、気安さがある。ただよっている雰囲気はだいたい個性的である。
若いころからずっと雑誌の編集をした。姿のない読者との触れ合いを模索していて、読者のくつろぐのは終りの方の雑記事であると思うようになった。読者をつなぎとめるには裏口がおもしろくないといけない。うすうすそういうことがわかってきたのは「英語青年」という伝統のある雑誌を預かって十年くらいしたころである。四十歳を機にこの雑誌の編集を辞めた。
三年ほどするとまた雑誌の編集がしたくなって、個人雑誌みたいな「英語文学世界」という雑誌を創刊した。はじめから編集後記に力を入れて、毎月、最後のページに〝編集閑話〟をのせた。〝閑魚〟を名乗る。
十年くらいしたところで版元がこの後記をまとめて一冊にしてくれた。『裏窓の風景』というその本が、毎月の雑誌の発行部数の倍以上も売れて版元をおどろかせた。