出版界の内情を描いた傑作『出版社大全』の著者、塩澤実信が執筆した108冊目の本。
18歳、アルバイトで迷い込み、週刊誌編集長10年、45歳で失職。著書は108冊、現在87歳。出版界のレジェンドがいま明かすエピソードの数々!!
≪あとがき≫ より抜粋
本著は、私が四十代半ばで職を離れ、出版界の落ち穂拾いに転じ、細々とした物書きとなってから刊行する百八冊目の本である。
百八冊目の拙著には、放浪の合間にあちこちの雑誌に書いたまま、筐底に眠っていたその“せん方ない所産”を、煩悩に急かされるままに集録している。
食にかかわるもの、戦記もの、児童ものだが、これら一万字前後の拙文は、ターゲットに迫り、思い入れて書いているだけに、雑誌に掲載されただけで消えてしまったのは、なんとも残念の思いが強かった。
「不肖な子ほど可愛い」-のタトエではないが、百冊余の拙著に収録されることもなく、筐底に埋もれていたわけで、書いた身にはもう一度、日の目を当ててやりたいの気持が一入であった。
煩悩は百八種あるというが、百八冊目の拙著に、筐底から甦った往年の煩悩の断簡隻句-放浪生活からの足跡を恥を忍んで収録した乱心の沙汰を、ご宥恕いただきたい。