国家の覚醒を促す 櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)1
第二次「政軍関係」研究会の挑戦 浜谷英博(「政軍関係」研究会座長代行)6
[講師・編集者略歴]21
第1部 英国・ドイツ・アメリカ編 …………………………………………………25
第1章 英国の政軍官関係(山崎元泰)26
英国の政軍関係──揺るぎない文民統制 26
日本の特殊な文民統制──文官〝優位〟のシステム 29
英国の軍と官の関係──軍官混合の組織で戦争指導 31
おわりに──英国民が抱く軍への信頼と尊敬の念 34
〈総括〉英国の政軍関係
王冠の下の軍隊、憲法の下の自衛隊 37
英国の文民統制と首相権限の強さ 37
英国と日本における軍の伝統と国民意識の違い 40
統帥権と国家元首をめぐる日本の課題 46
英国の国防省組織と文官・軍人のバランス 49
英米法の軍事的影響と英国の政軍関係の寛容さ 53
第2章 ドイツにおける政軍関係(松浦一夫)57
政軍関係(軍事に対する政治の優位)の憲法上の制度枠組 57
軍事に対する議会統制のための特別機関──防衛委員会と防衛監察委員 60
軍隊国外出動決定に対する議会統制 63
軍人と政治 65
〈総括〉ドイツの政軍関係
ドイツ軍人はなぜ「制服を着た市民」なのか 70
法による軍事統制──緻密な法体系と緊急事態対応 70
「制服を着た市民」という理念と軍人精神の希薄化 76
軍のモチベーションとドイツ的「内面指導」への懸念 79
軍事オンブズマン制度の是非──監視強化と自浄作用のバランス 81
連邦憲法裁判所の存在と派兵判断──司法が政策を変える 85
第3章 アメリカにおける政軍関係とその実際(和田修一)89
アメリカ政治制度の特徴と政軍関係 89
「財布と剣を分ける」──政軍関係における大統領と連邦議会 91
軍事に対する民主的コントロールと連邦議会 93
事例研究(1)湾岸危機・湾岸戦争時の議会の動き(一九九〇〜九一年)95
事例研究(2)9・11テロとイラク戦争をめぐる連邦議会の動き(二〇〇一〜〇七年)97
おわりに──日本へのフィードバック 99
〈総括〉アメリカの政軍関係
トランプ政権期に露呈した政軍関係の歪み 101
アメリカにおける軍と社会の関係──市民兵からプロフェッショナリズムへ 101
トランプ政権と「主体的統制」──軍との政治的取引の構図 106
市民社会と軍のあいだに横たわる矛盾──トランプ政権の一貫性欠如 110
戦争権限法の成立背景とその意義──議会復権をめぐる闘い 114
アメリカにおける国益判断と軍事行動の正当性 119
軍人・退役軍人への尊敬と制度的保障 125
州兵と連邦軍の二重統制──トランプ政権下の不協和音 128
〈補遺〉
アメリカの「政軍関係」と「文民統制」(堀 茂)135
「政軍関係」におけるアメリカの歴史的経緯 135
ハンチントン理論の今日的意義 137
ハンチントン理論への批判 139
有効な「文民統制」とは 141
ハンチントン以降の「政軍関係」理論 143
二つの統制モデル 144
トランプ政権の統制スタイル 147
「軍産複合体」という構造的問題 148
第2部 日本編 ………………………………………………………………………………………………………………151
第4章 現場から見た日本の「政軍関係」(佐藤庫八)152
第一線部隊から見た政軍関係 153
中央の幕僚組織から見た政軍関係 155
その成功例と失敗例 157
現場が望む政軍関係(1)──武力行使の開始時期の見直し 159
現場が望む政軍関係(2)──軍事委員会の設置 160
おわりに──真に戦える枠組みの構築 161
〈総括〉日本の政軍関係
軍事と政治の断絶を越えて 163
現場から見た政軍関係──防衛出動と武力行使の狭間 163
軍事の現場感覚と法制度のギャップ 171
政治家に求められる軍事的理解と制度設計 173
政治と軍事の信頼関係構築に向けて 180
第5章 有事の自衛隊行動と民間防衛(小川清史)185
はじめに──栗栖発言の本意 185
「事態認定」の壁 186
国民保護法と民間防衛 188
武力攻撃事態等の認定 189
憲法への自衛隊明記と防衛二法の改善提案 191
おわりに──強制力による住民避難とネガリスト方式の軍事行動 195
〈総括〉日本の民間防衛と政軍関係
「事態認定の壁」が突きつける課題 197
国民保護法の適用範囲と「事態認定の壁」 197
民間防衛の誤解と市民防護の本質 203
自衛隊法のポジリスト方式とその限界 209
交戦規定(ROE)運用の難しさと政治の関与 212
事態認定と自衛隊の法的位置づけの見直し 217
第6章 帝国憲法下の「政軍関係」と統帥権(堀 茂)220
はじめに──統帥権の本質とその運用の実態 220
国家揺籃期の「政軍関係」──参謀本部独立の経緯 222
帝国憲法制定後の「政軍関係」 223
日清・日露戦争時の「政軍関係」 225
戦間期における「政軍関係」と永田鉄山らの陸軍「革新」案 226
「文民統制」的志向の模索 228
おわりに──「統帥権の殼」を破ろうとした永田らの改革 230
〈総括〉統帥権と政軍関係の変遷
日本の政軍関係再構築への課題 232
統帥権をめぐる歴史的誤解と総力戦体制の模索 232
政治的軍人と軍事プロフェッショナリズムの欠如 240
天皇統帥と国軍化をめぐる制度的課題 246
防衛省組織と文官統制の残滓 250
憲法改正と軍の法的位置づけの必要性 256
第3部 共産国およびサイバー編 ……………………………………………………261
第7章 共産主義国家の政軍関係(村井友秀)262
主観的文民統制と客観的文民統制 262
独裁国家の政軍関係 264
ロシアの政軍関係 265
中国人民解放軍の構造 268
共産党にとって危険な中国軍 270
〈総括〉共産主義体制下の政軍関係
独裁国家の軍事統制モデル 274
共産主義国家における政軍関係──ロシアと中国の構造と監視体制 274
国際情勢下で揺れる中国軍──国軍化への移行は可能か 281
ロシアの文民独裁と軍指導者の距離感 283
独裁体制を支える人民解放軍──「国家内国家」と愛国教育の強化 287
第8章 アメリカのサイバー戦略・
サイバー軍をめぐる政軍関係(永野秀雄)291
ブッシュ政権──抑止的なサイバー戦略 292
オバマ政権──防御中心のサイバー戦略 293
仮想敵国からのサイバー攻撃 294
アメリカが陥ったサイバー空間における「抑止論」の罠 295
第一次トランプ政権──能動的サイバー作戦への転換 297
バイデン政権──継続的従事理論を推進 298
第二次トランプ政権──軍種としての「米国サイバー軍」成立の可能性 299
〈総括〉サイバー戦と政軍関係の変容
文民と軍人の境界が消える時 302
サイバー軍の登場と従来の政軍関係の逆転 302
軍人と文民技術者の混在──国際法と忠誠心のはざまで 306
能動的サイバー防御と専守防衛 311
政軍関係に完成形はあるのか──地域研究から見えてきたこと 315
「あとがき」に代えて
諸外国事例と日本的モデルの模索──「先見的文民統制」の構築に向けて 322