確かな知識・技術とともに、子どもの表現を引きだし、尊重し、楽しさを共有できる感性を育む表現(造形)
我々人間は、行為や言葉で意思を伝えようとします。人が行う表現とは、心を意図的に外に表し、誰かに伝達しようとする行為や形です。それを受け
止める人がいるからこそ表現する気持ちが生まれ、表現と成り得るのです。
子どもの豊かな表現を育む人は、子どもの素直な気持ちを伝えることができる人でなければなりません。子どもは心を汲み、共感してくれる人にこそ本心を表現します。受け手がいるからこそ表現は成り立ちます。そのためにはまず、心豊かな受け手でいなければなりません。そのような受け手になるためには、豊かな感受性が必要です。保育者に求められるものは、子どもの表現を引きだし、尊重し、共感し、楽しさを共有できる感性です。
本書は、講義科目である「表現(造形)」の教科書として作成しました。しかしながら、演習系科目である「造形」を講義科目としてその内容を修得するためには、演習の内容を知る必要があります。つまり、単なる知識としてではなく、実践を伴った知識の方が実感としての経験となり、実践する力とともにより深い学びが得られます。
保育に関しては、実践的なものから専門的な知識まで踏み込んだ内容となっています。保育の専門的な実践では、<実践>として現場でも役立つ内容を入れています。そして、個人から集団へと発展できる内容も入れてあります。専門的な知識としては、自分で手に取って使ってみないと分からないことまで含めています。これらを保育者として知っておくことで、実践するときに必ず役立つ内容となっています。また、保育者の資質の向上にまで踏み込んだ内容も入れています。しかしながら、造形の内容は幅広く、授業期間では網羅することは難しく、まだまだ足りない内容もありますが、本書を
手に取られた皆さんがここから派生して、自分らしい表現を見つけてくれたらと思います。
(本書「はじめに」より)