首里城の正殿へ伸びる一筋の道(浮道)は少し斜めになっていて垂直ではない。
なぜなのか?その答えを求め、本を読み、ネットを検索し、現地へ行き、友人知人からインスピレーションをもらい、道草を楽しみながら自分なりの説へとたどり着いた。
日本と中国、そして琉球と「違和感」を追い求める紆余曲折の旅の物語。
本書「はじめに」より
(前略)
奉神門をくぐると、正面に正殿がある。そこへ向かって伸びる一筋の道が浮道。つまり浮道は奉神門と正殿の中央を一直線に結んでいる。だが奉神門・南殿・正殿・北殿の四棟に囲まれている御庭をあちこち歩いているうちに、「あれ?」っと思ったのだ。正殿正面に立っているはずなのに、浮道がまっすぐこちらを向いてない。奉神門を入った時には正殿に向かって伸びていたはずなのに? そう、正殿と浮き道は直交していない。
だが「変だな」と感じたものの、どの方角にどれくらいずれているのかを考えるには至らなかった。が、直交している方が美しいはずなのに、なぜそうではないのかという疑問は、いつも何となく頭の片隅にあった。それは若い頃グラフィックデザイナーをしていたこともあって造形への関心が高いのかもしれないし、できれば謎を解いてみたいという探偵気質的な性格のせいなのかもしれない。
積年の疑問を解決したいと執筆を始めたのは二〇二二年だった。これまで漫然と感じていたこと、あれこれ断片的に拾ってきたこと、それらを文章にしていく過程での取材を通し、何かが見えてくるかも知れないと思ったのだ。
言い換えれば、これは私の紆余曲折の旅の物語でもある。