1970年代末からニューヨークに住み始めた野上は、1994年にいったん帰国するが、2000年にどのストリートにも愛着のあるこの街にふたたび戻る。しばらくぶりのニューヨークは、治安回復につとめた市長ジュリアーニの市政により、かつて危険な場所だったタイムズ・スクエア周辺も、安全でクリーンなエリアに変貌していた。時を経れば、街もこうして姿を変えていくことを強く感じた野上は、この街の「いま」をとどめておこうと、2001年、マンハッタンの中心で本書《メトロスケープ》の撮影に挑んだ。
撮影は、人通りの多い昼間、あるいは建造物の姿が映える早朝に行われた。スケールの大きな新旧のビル、その壁面を覆う消費を誘うショーウインドーや大型ビルボード。ストリートには、大都市で生きる市民と観光客。野上が大型カメラの描写力を使って捉えようとしたのは、そのいずれもが生き生きとした姿だった。そびえたつ意匠豊かな大きなビル群と、とても小さな存在でありながら個性をもってストリートを行きかう人々の両方がとらえられている。
52点の作品に加えて、部分を拡大した写真も適宜併載。ミクロとマクロの両世界が楽しめるユニークな構成の写真集。