相場で大儲けをしたら、結婚して大きな家を建て、田舎の母を呼び寄せるんだ…筆者のその夢は一瞬で打ち壊された。小豆相場の大失敗で菓子職人という職を失い、恋人とも別れることを余儀なくされる。
そこから職を転々とするが、投資の夢は枯れることはなかった。いかにして相場と株につき合えば良いのか、現在利益を出せるようになった筆者が、心斎橋大学に入学して文章の書き方を勉強し、幼いころから七十八歳の今日までを書き綴った。
子供のころ、九死に一生を得るということが三度もあった。多くの不運と失敗の繰り返しの中に、小さな幸運を呼ぶ何かが光る。
筆者は学歴もなく不器用で、誇れるものは何もないと言う。果たしてそうだろうか。夫が書くこの本の原稿を清書し続けた妻は、夫の変転の坂道を堅実な晩年へと導いた。この本は筆者の、いやこの夫婦二人の人生を賭けた、尊い共同の一作と言えるかも知れない。