池田一が世界各地で展開してきたアートプロジェクトを中心に、その困難なプロセスを乗り越えていくストーリーから、「アートを読む」という新体験へ。分断や排斥がまかり通る政治や経済のシステムに、組み込まれていく文化やアートの文脈。世界のアートシーンを未来に向けてシフトするアーティストとして、世界的に期待される池田一が、その閉塞状況を突破するために『アート以後のアート』に向き合う。この本を通して、いま高らかに『ポストアートの到来』を宣言したい。
美術館やギャラリーといった既存の制度に依存するのではない。それらの閉塞状況から、表現の自由を解放する『アート以後のアート』へのプロセスである。通常の政治や経済の論理と真っ向に向き合って、『アートのフィールド』を革新し続ける。「アースアート・ストーリー」で、具体的に挙げると、「東京/上野不忍池」、「限界集落・木口屋」、「世界自然遺産・屋久島の海岸」、「デリー/元ムガール王朝水路跡」、「シンガポール/超高層ビル群の中の池」など、「ポストアート」のフィールドに境界はない。「全ての場所に世界発信力がある」という信念のもとに、地球環境の危機に向き合うために、既成の場所や地域に、新しい流れを創り出す。「池田一は、かってない流れを生む」と言われる。
その「アート・フィールドの出現」のためには、完成品を見るだけの従来の固定的な視点とは決別したい。いま肝心なのは、出現へのプロセスを共有する視点である。場所との遭遇、通常の場所を革新する様々な困難、常識との戦い、金銭的交渉、出没するトラブルを乗り越えて、人々との出会い、協働へと向かうプロセスを、語る必要がある。それぞれのストーリーは、立ちはだかる政治や経済の枠組みを超えて、表現の自由、未来への協働の可能性、新たな民主主義などを探求し、実現化に向かう生々しい出来事の連続だ。
米国NY州の中学生が水のシンポジウムを開くのに、世界中からアーティスト・池田一を選抜した。彼らの曇りのない目には「新しいフィールドの開拓者」と映ったに違いない。
この本は、制度から解放され、表現の自由を求める人たち、人間の可能性を身近に感受したい人、そして何より一歩でも前進したい全ての人にとって、心強い仲間となるためのテキストとなるだろう、ポストアート宣言は、人間解放宣言である(池田一)。
著者について
池田 一(いけだ いち) 京都大学卒。地球環境問題、特に水に関する問題と強く結びついたアートワークを世界的規模で展開し内外で高い評価を受けているアーティスト。1991年、第21回サンパウロ・ビエンナーレでは、特別招待アーティストとして、日本人で初めてメイン・ステージを担当(ちなみにその前年度メインステージはヨーゼフ・ボイスであった)。
1995年、国連50周年記念アートカレンダーではクリストやイリア・カバコフらと共に「世界の12人のアーティスト」に選抜された。 また2008年5月には、ニューヨークの国連本部で行われた環境セミナーでは東・東南アジア、オゼアニア地域の代表として選抜され環境アートプロジェクトからの提案