■特集
農と食の「ジェンダー」を考える──多様性と交差性の視点から
……岩島史+靍理恵子+森真里+安里和晃 責任編集
「ジェンダー平等」や「女性活躍」が言われて久しい。しかし現実には、国や地方自治体の政策決定から地域社会、各家庭内での意思決定に至るまで、「日本人で、健康で、かつ年長の男性」がその大部分を専有している状況にみえる。とくに農業・農村においては、性差に加えて社会的属性がもたらす立ち位置の差が存在し、それが「区別」ではなく「差別」につながっている現実がある。
この状況を踏まえ本特集では、農業生産の現場から食として消費者の手に届くまでの過程で、「女性であること」や「男性であること」は、その他の社会的属性と交差しつつ、どのように経験され、そこにどんな矛盾や問題が存在しているのかを捉える。そのことを通じて農と食の「ジェンダー」に関する論点を提示し、問題が生じる原因と仕組みの解明をめざす。
■巻頭言
特集に寄せて
なぜ、今、「ジェンダー」と「インターセクショナリティ」の視点に立つのか
……岩島史・靍理恵子・森真里・安里和晃
■座談会
農業・農村・食品流通組織におけるジェンダー問題
──多様なすべての属性が尊重される社会を目指して
……池上甲一+勝野美江+寺岡聡希+福井浩+古川玲子
+山﨑容子+靍理恵子+岩島史
■Ⅰ 不可視化されてきた農と女性──資本主義における位置づけ
●1 村から世界を組み立て直す
──その道具としてのフェミニズム……藤原辰史
●2 農業・農村研究におけるジェンダー視点導入の到達点と課題
──農山漁村女性の「状態」や「実態」の記述の向こうへ……中道仁美
○コラム1 資本主義の歴史における食・農・女性
──バナナの生産と消費の交差をめぐる分析から……久野愛
■Ⅱ 農業の担い手たちの不公正の超え方
──大規模経営・農業委員・女性農業者
●1 北海道の大規模経営地帯における
夫婦間パートナーシップ型農業の現状と可能性……小内純子
●2 農業委員の活動における「女性向き」・「男性向き」の役割と分業の実態
──ジェンダーバイアスの解消と克服に向けて……佐藤洋子
●3 女性酪農家の労働と経営を支える組織とネットワークの意義
──岡山県の4名の女性酪農家の経験から……大竹晴佳
●4 農村女性をエンパワーメントする集団やネットワーク…