そのインパクトのある役者絵で現代でも抜群の知名度を誇る浮世絵師・東洲斎写楽。かつて彼の名を語る時に、決まり文句のように必ずついて回るフレーズがあった。
「正体不明の謎の絵師」「世界三大肖像画家のひとり」――しかしそれらは、いずれも研究史の実態からは乖離した、いわば錯誤の伝言ゲームが生み出した「幻想」だった。伝言ゲームは誰から始まり、そしていかに広まったのか。半世紀以上にわたる「写楽ブーム」の過ちの歴史とメディアの責任を作家・高井忍が追及する。
東洲斎写楽の“常識”「世界三大肖像画家の1人」「正体不明の謎の絵師」は嘘だった。写楽をめぐる真のミステリ、それは学界で写楽についての解明が進むのと並行して、マスメディアが誤った説を広め、定着させ、さらなる珍説奇説を積み上げ続けたことだ。メディアはなぜ、写楽の真実を隠蔽する方向に走ったのか?高橋克彦・梅原猛・池田満寿夫・島田荘司ら著名人はいかに関わったのか?本書は史料を駆使してその経緯を追った労作である。
――作家・歴史研究家 原田実さん推薦!