本書はバイオテクノロジーに注目したうえで、生命と科学技術と社会の関係について考える。これまでと違った視点を拓くための、大学生初学者向けカラーテキスト第一弾「発生/生殖/クローニング」編である。
本書はとくに生物学と医学または医療寄りでアプローチしながら、さまざまなバイオテクノロジーについて単にその賛否を問うのではなく、別の仕方で展望しようとするものである。というのも、テクノロジーの賛否を問いそのどちらに与するかを迫るような議論は、実のところ何も議論していないようにみえるし、私たちヒトを含むあらゆる生き物の生・性・ライフ・生きざまについてあまりにも単純化しているようにみえるからである。これに対し本書では、バイオテクノロジーの諸技術について、科学的に正確にその基本的な仕組みと概要を押さえたうえで、バイオテクノロジーに関わる生命というものの、あるいは生き物というものの、脆さと背中合わせの〈たくましさ〉や〈したたかかさ〉を垣間見ていきたい。本書は、科学技術と社会をめぐる「よい子の道徳教室」的なテキストと一線を画すものである。