十六世紀半ば、当時のヴェネト地方を代表する建築家ヤーコポ・サンソヴィーノがパドヴァ近郊の湿地に築いたヴィラ・ガルツォーニ。カルト的雑誌『サン・ロッコ』をケルステン・ゲールスらと共に創設したミラノの建築家ピエル・パオロ・タンブレッリは、霧に包まれ、ファサードに覆われた空虚のようなこの建築を「失敗の芸術」として読み直し、フォークナー『アブサロム、アブサロム!』に通底する廃墟の記憶と重ね合わせる。湿地に迷い込んだ都市的類型のうつろな姿を見事に捉えたバス・プリンセンによる3枚のカラー写真入り。
表題作のほか、二〇一〇年代を代表する独立系建築誌『サン・ロッコ』創刊号のマニフェスト的巻頭言を手がかりに、「無垢」な建築の可能性を再考する訳者あとがきを収録。
あとがきに登場する建築家・作品
アルド・ロッシ+ジョルジョ・グラッシ「モンツァのサン・ロッコ地区」/ピエル・ヴィットリオ・アウレリ/ディオゴ・セイシャス・ロペス/エマニュエル・クリスト/アダム・カルーゾ/パスカル・フラマー/伊東豊雄「中野本町の家」/バーナム&ルート「モナドノックビル」/篠原一男「軽井沢旧道の住宅」/フランク・ゲーリー「インディアナ・アヴェニュー・スタジオ」/ハンネス・マイヤー+ハンス・ウィットワー「バーゼルのペーターシューレ」/ジュゼッペ・パガーノら「水平都市計画案」/ヴィラノヴァ・アルティガス「ジャウーの公共浴場」等