建築の設計は、複数の案から徐々にひとつの案にまとまっていくのが通常で、思考の、そして類推の整理の流れとしてはそうなるのが自然だろうと思う。k邸は、ひとつの案にまとまった後に、ちょうど一卵性双生児のようなふたつの案に分離された。それまで固定しつつあった住まいのいろいろは、今度は差異を求めて、ふたつの性格に育っていく。
塩崎太伸+小林佐絵子/アトリエコによる未完のプロジェクト《k邸の双子》。通常の設計プロセスとは異なる操作によって生まれたこの双子は、互いを否応なく参照しつづけるフィードバックの運動を内包した形式として捉えなおされる。このふたつの案のあいだの緊張関係は、建築を単一の解へと収束させることへの問いを投げかけ、「ありえたる世界の複数性」へと開いていくことの可能性を提示している。
塩崎太伸+小林佐絵子/アトリエコによるふたつのテキスト「あらわれとあらわしの地平/記憶風景」、《k邸の双子》のドローイング集、佐伯達也によるテキスト「双子の設計論覚書」を収録。未実現、あるいは未完の作品を通じて建築の制作を問いなおすFORGET PROJECTSシリーズ第1号。