単純売却より手取額が増える不動産M&Aという選択肢。ビルの老朽化問題、空室率、相続税、後継者不在など様々な課題を抱える不動産オーナーに贈る実践的ガイド。事例から学ぶ成功のロードマップと留意点、信頼できるアドバイザー選びまで、不動産資産を次世代に繋ぐための戦略的知恵が詰まった一冊。
本書は、不動産賃貸業を営む経営者が直面する様々な課題に対し、新たな選択肢として注目される「不動産M&A」に焦点を当てた実践的ガイドブックである。高度経済成長期に建てられた多くのビルや賃貸物件が築50年を超え、老朽化問題が深刻化する今、多くの不動産オーナーは耐震性の不足、設備の陳腐化、アスベストやPCBといった有害物質の処理など、多岐にわたる課題に直面している。加えて、相続税対策や後継者不在問題も喫緊の課題となっている。
従来、こうした問題に対しては不動産の単純売却が一般的な解決策であったが、本書では「不動産M&A」という新たなアプローチに光を当てる。不動産M&Aとは、不動産を所有する法人の株式を譲渡することで事業継承を行う手法であり、単純売却と比較して税務上の優位性があり、最終的な手取額の増加につながる可能性が高い。
第1章では、現代の不動産賃貸業が直面している構造的問題を多角的に分析する。建物の老朽化から、相続税問題、後継者不在という経営上の課題まで、不動産オーナーが直面する複合的な課題を整理する。
第2章では、不動産M&Aと従来の不動産単純売却の違いを明確にし、なぜ不動産M&Aの手法が手取額の増加につながるのかを具体的な計算例を用いて解説する。
第3章では、不動産M&Aの具体的な進め方とその留意点を実務的観点から解説する。ロードマップの提示から始まり、会社分割やスクイーズアウトといった専門的手法、適切なアドバイザーの選定方法、デューデリジェンスの実施要領など、不動産M&A特有のプロセスを詳細に説明する。
第4章では、実際の不動産M&A事例を6件紹介する。相続問題、老朽化リスク、後継者問題、体調不良など、様々な理由で不動産M&Aを選択した事例を具体的に解説し、それぞれのケースにおける意思決定プロセスや結果を分析する。
第5章では、不動産M&Aを成功に導くための鍵として、適切なアドバイザーの選定方法に焦点を当てる。M&A仲介業界の問題点や「中小M&Aガイドライン」の改訂内容を踏まえつつ、信頼できるアドバイザーを見分ける視点やアドバイザリー契約の注意点を解説する。
本書は、これまで体系的に解説されてこなかった「不動産M&A」という選択肢を、実践的かつ具体的に紹介している。不動産賃貸業を営む経営者、その後継者候補、不動産投資家、また不動産M&Aに関わる専門家にとって、資産価値を最大化しながら次世代へと継承するための戦略的選択肢を示す貴重なガイドとなるだろう。