──野球少年に物理を、物理少年に野球を!──
物理学は、法則・公式を丸々覚え、それらを操って問題を解く科目であり、数学的な準備
も多く必要だと考えられ忌避された。高校での履修者も長く減少傾向にある。しかし実態
は逆である。その本質は「我々の日常を支える常識」の理論化にあり、法則も公式も必須
ではない。また、物理を学べば数学も分かる。本書は、この観点から高校範囲の物理の全
体像を概説する。野球をテーマに、何故「投打の頂点」に一人の選手が到達出来たのか、
その奥に潜む物理的原理は何かと問い、それに答える形で議論を進めた。他にも様々な話
題を巡り、図やグラフを用いて感覚的な理解を目指した。冗長を厭わず、平易な記述に徹
する一方で、独自記号を多用し、新規解法を提案するなどして展開の新鮮さも追求した。
本書を通して、物理学を紙と鉛筆だけではなく、ボールとバットでも愉しんで頂きたい。