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人生に起こり得るすべての勝負ごとはやはり体力から始まるのだ

天使の跳躍
天使の跳躍

天使の跳躍

    七月 隆文

/

文藝春秋

/

¥2,090
「神に愛された天才」vs「人に愛された中年の星」

知られざる将棋のタイトル戦を舞台に繰り広げられる、感動の人間ドラマ。
恋愛小説の金字塔を立てた著者が開いた、新境地。

40歳までタイトルを獲れなかった棋士は、引退まで無冠に終わるーー。
それが才能と加齢による限界がもたらす、将棋界の残酷な歴史。
田中一義は46歳。かつて5度もタイトル挑戦に敗れ、あと一歩で栄冠に届かなかった「悲運の棋士」。それでも諦めずにきた彼に奇跡が微笑み、念願のタイトル挑戦権を手に入れた。
だが迎え撃つ相手は「令和の王」ーー源大河八冠。まだ一度もタイトル戦で敗れたことのない、全盛期の若き天才。
それは誰もが絶望する、中年棋士のラストチャンスだった。

家族と戦友、元天才の弟子との絆、初恋と、青春の残光……これまでの人生のすべてを星のごとく燃焼させる一義は、神の子に届くのか。

熾烈な才能の世界と家族愛をみごとに描いた傑作。
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栗山店長コメント

栗山店長コメント


「ないと思って探すから、ないんだ!」
 盤上で息を呑む攻防が繰り広げられる中、主人公に届いた「声」。まるで読んでいる自分に向けられているかのように、グサッと刺さりました。

長い将棋の歴史で、無冠のまま40歳を過ぎた棋士がその後タイトルを獲得した例はなかったと言います。
プロになる早さ=才能と言われる過酷な、ある意味残酷とも言える世界において、46歳になる男はなぜ奇跡を起こすことができたのでしょうか。
誰しも挑戦を重ねていけば、自分にはできないかもしれないと頭をかすめる瞬間があります。そこが勝敗を分かつポイントなのだということを、それを超えた時に何かが起こるのだということを、この作品は気づかせてくれます。
また、知力の戦いの最高峰とも言われる将棋が実は肉体的な”格闘技”でもあり、人生に起こり得るすべての勝負ごとはやはり体力から始まるのだということも教えてもらいました。

気づけば主人公の生き方に憧れ、その人間力に心を震わせ、涙が溢れていました。 この作品に出会い、素晴らしい時間をもらえたことに感謝です!

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生きがいとは何か、人はどう生きなければならないのか

男子の本懐
男子の本懐

男子の本懐

    城山 三郎

/

新潮社

/

¥935
男子の本懐

緊縮財政と行政整理による〈金解禁〉。それは近代日本の歴史のなかでもっとも鮮明な経済政策といわれている。第一次世界大戦後の慢性的不況を脱するために、多くの困難を克服して、昭和五年一月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸と井上準之助。性格も境遇も正反対の二人の男が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを静かに問いかけた長編経済小説。

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栗山店長コメント


「常識を養うのに読書の必要はないかもしれぬ。そしてまた日常の事務を処理して行くのにも読書の必要はない。しかし、人をリードして行くには、どうしても読書しなければならぬ。明日起こってくる問題を知るためには、どうしても読書しなくてはならぬ」
昭和5年、濱口雄幸総理とともに命がけで「金解禁」を断行した井上準之助蔵相の言葉です。

性格も境遇も正反対の二人ですが、決して判断を間違わないよう絶えず学び、国のために己のすべてを尽くさんとする井上蔵相に、濱口総理は全幅の信頼を寄せました。
近代日本の歴史の中で最も鮮明な経済政策と言われた緊縮財政と行政整理による金解禁は、二人の生き様そのものといってもいいでしょう。

東京駅で狙撃され重傷を負った濱口総理は、「総理たる者が国民との約束を守らなければ」と、靴さえ重くて歩けない状態にもかかわらず、布を足に巻きつけ、黒く塗って靴を履いているように見せかけ国会に登壇しました。
生きがいとは何か、人はどう生きなければならないのか。多くの示唆を与えてくれる、心の底から読んでほしいと思える一冊です。

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「古典」とされる書物は、学びを得るにはこれ以上ない貴重な財産

葉隠入門
葉隠入門

葉隠入門

    三島由紀夫

/

新潮社

/

¥649
葉隠入門

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の一句があまりに有名な「葉隠」。
過激思想の書と誤解されやすいが、その真髄は「死という劇薬」こそが自由や情熱、生きる力を与えるという逆説的な「生の哲学」である――。
「葉隠」の処世訓の精髄を読み解きながら、凝縮された三島の思想に触れられる。時を超えて現代人の心に強く訴え続ける名著。「葉隠」現代語訳付。

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栗山店長コメント

栗山店長コメント


「古典」とされる書物は時代を問わず読まれ、様々な解釈をされ、多くの人に大切にされてきただけものだけが残っている、それだけに学びを得るにはこれ以上ない貴重な財産なのだと感じています。
監督時代には日々悩み、苦しむ中、いつも何かヒントが欲しくて古典を貪るように読んでいました。本を読むというより、古典の活字に答えを求めている感じだったと思います。

「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」
武士は常に死を覚悟し、その覚悟を持って生きるべきであることを説き、武士道の根本的な精神を著した『葉隠』(はがくれ)は、江戸時代中期に書かれた書物で、佐賀藩士の山本常朝が武士としての心得を口述し、それをまとめたものとされています。

そしてここで紹介する『葉隠入門』は、その古典に感銘し、愛読した三島由紀夫さんが、『葉隠』を噛み砕き、解説した一冊で、三島さんがそれをどう読んだのか、その解釈は本当に腹落ちしました。
緊張感のある内容ではあるのですが、こんな風に生活してみるといいよ、といった現代にもつながることが随所に記されているんです。

さぁここからピリッといこうぜ!なんて人にはピッタリです。

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栗山英樹氏と有志による
北海道栗山町の手作り天然芝球場

栗の樹ファーム

栗山店長からのご挨拶

自分の人生で経験できることは限られていますが、私たちは「本」を通じて先人の素晴らしい経験や考え方を学ぶことができます。
また、人としての大切な情緒を熟成するには、動画だけでなく文字から取り入れ、自分の頭で考える時間がどうしても必要だと私は思うのです。
そこで今回、こんな場所を作ってもらいました。
大変な時代だからこそ、自分の助けになる一冊と出会うきっかけになったら嬉しいです。

あの夏のクライフ同盟
あの夏のクライフ同盟

あの夏のクライフ同盟

    増山 実

/

幻冬舎

/

¥1,980

(本体価格)

14歳のおれたちは自転車を走らせた。
サッカーの“神”に会うという夢を乗せて。
恋愛、友情、夢、大人への憧れと逃避……。
傑作青春小説。

しっかり者だがどこか流されがちなぺぺ、気弱なオカルト好きのツヨシ、運動神経抜群で人気者のサトル、ムードメーカーのエロ番長・ゴロー。北九州に住む中学生4人組は、いつでも一緒のサッカー仲間だ。そんな彼らのもとに歓喜と絶望のニュースがやって来た。大ファンで、雑誌で見かけてはサッカーの「神」と崇めてきたヨハン・クライフ。彼がオランダ代表で出場するW杯が日本初の生中継されるが、九州は放送地域外だという。馬鹿馬鹿しくも時に切ない日々を過ごしながら、4人は“クライフ同盟”の名の下に秘密の計画を進めていく。大型台風が接近する中、放送を見届けることはできるのか?
詳細はこちら

おすすめポイント

最近、”美しいサッカー”という言葉に惹かれヨハン・クライフのことを書いた本を何冊か買ってみたのですが、この作品はいわゆるサッカー論ではなく青春小説。しかも主人公の4人”14歳のおれたち”はなんと私と同世代! 憧れのアイドルはもちろん、中二時代、中2コース、平凡パンチ、GORO、ノストラダムスの大予言、スプーン曲げなど作品に登場する何もかもが懐かしく、他人にとってはどうでもいいものでも自分にはこれ以上大切なものはないと思えた、そんな青春時代を思い出させてくれました。
大人になるまでに誰もが経験する葛藤や苦労、それを抱えているからこそ本当に大切なものを大切だと感じられる純粋な思い、そして元気でいるだけで喜んでくれる家族の存在、読んでいて両親の思いに直に触れた気持ちになりました。
人と人との接点が希薄なこんな時代だからこそ、これだけは大切に! もし自分は一人だと感じる瞬間があるのなら、尚更こんな世界に浸ってください。

栗山英樹書店について

北海道日本ハムファイターズ、野球日本代表「侍ジャパン」を監督として率いた栗山英樹さん。この連載では毎回、その真摯で“実践的”な人生論に根差した書籍たちをご紹介いただきます。

2025-05-21

栗山店長からのご挨拶


自分の人生で経験できることは限られていますが、私たちは「本」を通じて先人の素晴らしい経験や考え方を学ぶことができます。
また、人としての大切な情緒を熟成するには、動画だけでなく文字から取り入れ、自分の頭で考える時間がどうしても必要だと私は思うのです。
そこで今回、こんな場所を作ってもらいました。
大変な時代だからこそ、自分の助けになる一冊と出会うきっかけになったら嬉しいです。


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栗山 英樹

(くりやま ひでき)

1961年東京都生まれ。監督として2016年に北海道日本ハムファイターズを日本一に、2023年には侍ジャパンをWBC世界一に導く。2024年、日本ハム球団の最高責任者であるCBOに就任。『信じ切る力』(講談社)、『監督の財産』(ワニブックス)、『栗山英樹の思考』(ぴあ)など著書多数。

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羊式型人間模擬機
羊式型人間模擬機

第12回ハヤカワSFコンテスト 大賞受賞作

羊式型人間模擬機

    犬怪 寅日子

/

早川書房

/

¥1,760

(本体価格)

男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」はその肉を捌き血族に食べさせることを生業とするアンドロイド。ついに大旦那が御羊になったある日、「わたくし」は儀式の準備を進めるが、一族の者たちは「御羊」に対して複雑な思いを抱いていた
商品詳細

前半 / ジュンク堂書店現役書店員 大賞受賞

後半 / 犬怪寅日子さんインタビュー