#1  最後まで貫き通した稀代のリーダーの生きざまを、この作品は後世に遺してくれます

#2  大きな危機にある人間社会への切実なメッセージ

#3  尊敬する人の欠点が見つかった時、あなたの心はどう感じていますか

栗山店長コメント

　第二次世界大戦後、連合国が日本の戦争指導者を裁いた国際軍事裁判の通称を「東京裁判」と言います。

　そこでＡ級戦犯として死刑の判決を受けた七人のうち、ただ一人軍隊に属さない文官であった広田弘毅。外相や首相を歴任した広田は、戦争遂行の政治的責任を問われ、断罪されました。

　裁判の過程において、皆、極刑を免れるため弁解を重ねる中、自身は戦争に反対していたにもかかわらず、一切の自己弁護や釈明をせず、「全責任を負う」とすべてを受け入れ、自らの命を捧げたその心中やいかばかりか……、想像するだけで心が震えます。

「君子は弘毅にし以って任を負うべし」
この『論語』の一節は、「君子(人格者)は度量が広く、強い意志と忍耐力がなければ重責を担うべきではない」と説いています。
「弘毅」の名は、その一節から取られたものだろうと思います。
「度量が広く、強く揺るがぬ意志」を示すその名に込められた思いを体現し、最後まで貫き通した稀代のリーダーの生きざまを、この作品は後世に遺してくれます。

栗山店長コメント

　前京都大学総長にしてゴリラ研究の第一人者である山極寿一さんが、ゴリラの目で見た人間社会の不思議を洗い出し、改めて現実と未来を見つめなおしてほしいと訴える本書には、今、歴史の転換点を迎えつつあり、大きな危機にある人間社会への切実なメッセージが込められています。

　ゴリラは、オスが子どもの世話をする霊長類の中で稀な種なのだそうですが、とは言えオスも自分の意志だけでは父親にはなれません。まずメスから信用されて子どもを預けられ、次に子どもから頼りにされて、はじめて父親としての行動力を発揮することになります。
子どもたちを一手に引き受けたオスは外敵から守り、子どもたちが対等につき合えるように監督します。決してえこひいきすることはありません。けんかが起こると必ず小さな子どもを助け、先に手を出したほうをいさめます。だから子どもたちは、オスのそばでは体の大きさに関係なく対等につき合えるのだそうです。
このエピソードは本当の意味での大人であることの意味や、リーダーの姿をゴリラが教えてくれている、私にはそう感じられました。

　論理で世界を理解する前に、感性で世界と対峙する。そして、人類がどこでどう間違えたのかを理解するためにも、再び自然と会話する必要があるのかもしれません。