
書店員が選ぶノンフィクション大賞2025
贈呈式レポート

「書店員が選ぶノンフィクション大賞2025」を受賞された鈴木 俊貴(すずき としたか)さんの贈呈式を、2025年11月17日(月)にジュンク堂書店 池袋本店で開催いたしました。
受賞作品
大賞
作品
プロフィール

鈴木 俊貴
(すずき としたか)
動物言語学者。東京大学准教授。1983年、東京都生まれ。
日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学白眉センター特定助教などを経て、現職。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本生態学会宮地賞、日本動物行動学会賞など受賞多数。
初の単著となる『僕には鳥の言葉がわかる』で、第13回河合隼雄学芸賞、第24回新潮ドキュメント賞を受賞。
愛犬の名前はくーちゃん。
鈴木俊貴さんからの受賞コメント
「どうして鳥たちは、こんなにいろんな声を出すのだろう?」
――今からちょうど20年前、そんな素朴な疑問から、僕の研究は始まりました。朝から夕まで森のなかで、鳥たちを夢中で追いかける日々。観察と思索を繰り返し、時には実験によって確かめながら、自分なりの方法で研究を進めてきました。
そしてたどり着いたのは、鳥たちの驚くべき言葉の世界。シジュウカラの鳴き声の一つひとつには意味があり、かれらはそれらを組み合わせて「文」をつくることまでできるのです。
古代ギリシャ時代から現代まで、言葉を持つのは人間だけだと信じられてきました。しかし、シジュウカラたちは、それよりはるか昔から、かれら自身の言葉を操り、生き抜いてきたのです。
どんなに身近な自然のなかにも、まだ僕たちの知らない世界が、きっと色鮮やかに広がっているはずです。
本書が、そんな世界への扉を開くきっかけとなれば嬉しいです。
この度は「書店員が選ぶノンフィクション大賞」に選んでいただき、誠にありがとうございます。本当にうれしいです。
この本には、僕がシジュウカラという鳥に出会って、かれらの言葉を解き明かすまでの研究の歩みをつづりました。

研究を始めたのは2005年の10月末。今から20年前のことでした。当時は、鳥に言葉があるなんて思っていなかったんです。ただ、シジュウカラが、他の鳥と比べて本当にいろんな声を出していることに気がついて。それがきっかけだったんです。毎日のように森に通って、鳥たちを観察し、観察だけではわからないところは実験で確かめて、自分なりにアイデアを出して研究を続けてきました。すると、驚きの世界が見えてきたんです。シジュウカラは鳴き声の一つひとつを言葉として使っているし、それを組み合わせて文章を作ることもできる。最新の研究では、翼を使ったジェスチャーがあることもわかってきました。
『僕には鳥の言葉がわかる』は人生で初めて書いた本なのですが、このような賞をいただけて、とてもうれしいです。論文っていうのは多くの場合、書いたらそれでおしまいで、すぐ次の研究に進みます。ですが、本の場合は違うんですよね。本は、出版と同時に新たなスタートが切られる。いろんな人に届けるために、がんばらなくちゃいけない。それは著者の力だけでは足りないんです。本書が出版されてから、小学館・書店・読者のかたがたが本当にこの本を力強く応援してくださって、その結果、今日の受賞があるのだと思います。皆様には本当に感謝しています。
鈴木さんへインタビュー
――鈴木さんは「書店員が選ぶノンフィクション大賞」についてご存知でしたか?本書を出版される際に、この賞を受賞したいと思われていましたか?
もちろん知っていました。この本を出版するにあたり、できたら「書店員が選ぶノンフィクション大賞」を取れたらいいなとも思っていました。ただ、過去にはとても優れた作品が受賞していましたし、他のノミネート作品も素晴らしかったので、受賞できるかは最後の最後までドキドキでした。

――受賞発表を聞いた時、どういう気持ちになりましたか?
受賞したと聞いた時はとてもうれしかったです。応援してくださった書店員のかたがたくさんいたことが、なによりうれしかったです。
――山ごもりの研究中、1ヶ月間お米だけ食べて生活されたそうですが、体調は問題ありませんでしたか?
3ヶ月分の食料を持って行ったのですが、2ヶ月過ぎたあたりで、お米しか残っておらず、最後の1ヶ月をお米で過ごしました。帰ったらガリガリになっていて。僕は178 cmあるんですけども、体重が51キロまで落ちてて、普段より10キロぐらい痩せました。
大学に戻って体脂肪計に乗ったらエラー表示。5%未満だと測れないらしいです(笑)。研究に夢中になりすぎて、体調管理ができていませんでした……。
皆さんが山で鳥を研究する時は、米の他にも味噌ぐらい持って行ったほうがいいと思います。

――将来鈴木さんにお子さんができて、そのお子さんが鈴木さんの本を読んで、「お父さんのような研究者になりたい」と言われたら、鈴木先生はどのように声をかけますか?
子どもが何かに興味を持つことは素晴らしいことだと思います。だからなんだろうな。なりたかったらなったらいいと思うけれども、いろんな道があることを覚えていてほしいです。シジュウカラ以外にもたくさんの動物がさまざまな行動をしていますし、その中にはまだよくわかっていないことが山ほどあります。
それが少しずつ明らかになって、論文になって、本になって、そうやって知識がつながっていくことで、みんなの世界が満たされ、広がっていく。それが自然科学の素晴らしいところだと思います。
だから、そういう研究をやりたいっていう気持ちであれば応援したいです。
――たとえば、東京都内などの都心部で、鳥を見るのにおすすめの場所がありましたら教えて下さい。
どこにでもいます。
シジュウカラは池袋の駅前でも見たことがあります。池袋にある立教大学にもたくさん棲んでいました。井の頭公園や代々木公園でも見かけます。実はいろんな公園で鳥たちを見ることができるんですよ。ただ、それにみんな気づいていないだけなんですけど。最近は東京都内でもオオタカとか猛禽類も見かけるようになったので、シジュウカラたちは「ヒヒヒ(タカだ!)」って鳴いていたり。それに気づくだけでも本当に世界が広がりますよ。

――この本を執筆されている時に、どのような読者層を想定されていましたか。
中学生から大人の方まで、広く内容を理解してもらえるように、心がけて書きました。だから、専門用語は一切使わないで、自分が見たそのものを、皆さんが使っている言葉で表現するという方針で書きました。その甲斐もあってか、意外にも小学3年生、4年生からも感想をいただくなど、思っていたよりもたくさんの人にこの本を読んでもらえていて、とてもうれしいです。
――本の中で登場するイラストは先生ご自身が描かれたものだそうですが、元からイラストを描くことがお好きだったのでしょうか、それとも執筆にあたりイラストをとても練習されたのか、お伺いしたいです。
本気で絵を描いたのは高校の美術の授業以来。頑張って描きました。ただ、鳥たちの行動を記録するためにスケッチを描く習慣があったから、その期間に結構上達したのかもしれません。漫画家の先生にイラストの原案を見ていただくこともありました。

――第2作目の出版予定はありますか?
まだ発表していない驚きの発見がたくさんあります。まずは研究論文として発表し、ある程度成果がまとまったら、2作目も書こうと思います。ご期待ください。

書店員が選ぶ
ノンフィクション大賞
運営書店員より
この本は、誰よりも小学生や中学生に読んでもらいたい。身近な虫や動物や植物に興味を持ち、誰に言われるでもなく、誰のためでもなく、自分自身がその世界が好きで好きでのめり込んでいった結果、いつの間にか世界中が驚く大発見にたどり着くことだってあるんだ、ということを知ってほしい。
書店員として、そういう本に出会えた悦びを、大賞という形でみなさんに伝えることができて、
本当に良かったと思います。
(丸善ジュンク堂書店 / 営業企画部 部長 /
大内 達也)
鈴木さんがシジュウカラの言葉を発見したことで、見える世界がどんどん広がっていったように、この本を読んだ人たちも、自然の景色に目を向け、動物の声に耳を傾け、彼らがどんな世界を見ているのかじっくり観察するうちに、いつか人間と動物が言葉を交わせる日が訪れるかもしれない。そんなことを私は思いました。
(丸善ジュンク堂書店 / 仕入販売部 /
川合 雄高)
受賞記念トークイベント・アーカイブ配信
鳥たちの言葉がひらく世界
登壇者 :
鈴木俊貴さん、北村浩子さん、竹井怜さん
日時 :
2025年11月17日(月) 19:00 ~ 20:00
アーカイブ配信期間:
2025年11月18日15時00分~2025年12月2日23時59分
※アーカイブ配信はイベント開催日の翌日15時からご視聴可能となります。配信期間の詳細については、ご購入時にダウンロードいただける参加方法が記載されたPDFファイルをご確認下さい。