特集にあたって
一度きりの貴重な人生を,自分らしく生きていきたい.誰もが抱く願いです.
どう生きるかの選択はその人自身のなかにあると思いますが,「今の治療を継続するか……やめるか……」「本当は家に帰りたいけど家族に迷惑をかけるから……」など,不確実な自分の人生の今後を見据えて,どうするかを考え行動することはたいへんむずかしいことです.患者さんやご家族の深い悩みに寄り添う医療者も,ともに考え悩み,時にはそこにいることさえつらくなるような体験をすることもあるでしょう.
アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)は医療や福祉の現場だけではなく,高齢者支援や市民啓発活動など,さまざまな場で広く周知されるようになりました.多くの看護師がACP に関心を寄せ,学会,講演会,書物や雑誌などで目にすることも増えています. 一方で,ACP 支援はむずかしい,ACP ってよくわからないという声も依然として少なくありません.「日常ケアのなかで取り組んでいることと何が違うのか(このような実践はすでに行っている)」,「ACP 支援は誰が実践するのか(主治医や専門教育を受けた特定の人が行うものでしょ)」,「人生の最期に関する会話って苦手だな(デリケートな内容でコミュニケーションがむずかしい)」,「チームの誰がいつどんなかかわりをしているのか見えない(ACP 関連情報がカルテのさまざまな場所に記載され,情報収集しにくい)」など,個別ケースのACP 支援から組織的な取り組みにいたるまで,臨床現場の悩みはつきません.
今回の増刊号では,臨床で活動する看護師が,ACP について改めて学び,ACP 支援の実践に活かすことができる内容をお届けしたいと思います.とくに,Ⅱ章とⅤ章はACP を2 つの視点からとらえ,1 つは,「対話を重ねることにフォーカスし,対象理解やその人に合わせたコミュニケーションについて考える視点」,もう1 つは,「患者の病態や治療,患者や家族の思いや選択などを,ACP プロセスとその変化としてとらえる視点」から考えたいと思います.
臨床ではどちらの視点も重要ですが,一人ひとりの看護師が患者や家族と向き合う上で参考となるような内容になればと思います.そして組織や地域とともにACP を実践していく基盤作りが推進されることを願っています.
2023 年1 月
近藤まゆみ
児玉美由紀