監修にあたって 馬場 直子 編集委員
大学病院や一般の市中病院では,皮膚科で小児をみることは少ないかもしれないが,皮膚科のクリニックでは小児をみられている先生も多いと思う.ありふれた皮膚疾患ならまだしも,遺伝性皮膚疾患や希少な感染症,腫瘍など,小児では鑑別すべき疾患が成人とは異なるものもあり,診断がむずかしいとの声もよく聞かれる.
小児皮膚科の特徴は,まず母斑や血管腫をはじめとする先天性皮膚疾患が多いこと,疣贅,頭部白癬,疥癬,Buruli 潰瘍,尖圭コンジローマなどの感染症も意外に多く,川崎病,BCG 接種後の副反応など小児特有の疾患や病変もある.この『小児の皮膚疾患カラーアトラス』には,少ないと思われている小児乾癬の症例も膿疱性乾癬を中心に多く集めることができた.
近年の傾向として,生物学的製剤が低年齢でも使われるようになったため,それらの効き方や副反応の現れ方が小児ではどうなのか,既報告例を確かめておく必要もある.また,新生児期にみられる皮膚疾患の中には,自然消褪が期待できるもの,そのまま不変で残るもの,増大したり悪性化する恐れのあるものなど,予後は千差万別である.できるだけ早い治療を要するもの,気長に待つ必要があるもの,成長を加味したうえで考慮しなければならないものなど,治療方針を考えるうえでも成人とは随分異なる.
皮膚の異常は誰の目にもみえるだけに,ものごころのつき始めた子どもはもとより,家族もたいへん気になるもので,完全に治したいという思いは当然である.それに対して,いまのわれわれがどのくらいまで応えられるか,その最先端の限界を知っておくことも必要であり,知識をアップデートしておくことが義務であると思う.
しかし目でみえることは皮膚科の最大の利点でもある.ほかの人に皮膚疾患の特徴や診方を伝えるうえで,100 の言葉より1 枚の臨床写真のほうが多くを語ってくれる.本書は,過去15 年間の『皮膚病診療』に掲載された小児の皮膚疾患約200症例の臨床写真を項目ごとに分類して掲載した.日常診療で子どもの皮膚疾患をみるうえで,少しでもお役に立てれば幸いである.