特集 陽の当たらない疾患
(山本 俊幸 編集委員)
一般的に,ある疾患が脚光を浴びるきっかけは,新薬(それも画期的な薬剤)が登場した場合や,病態のブレイクスルーが発表された場合などが思い浮かぶ.新薬が上市されるには臨床試験が必要で,それには症例数がある程度揃わないとできないし,企業側は臨床試験にかかる費用を(発売後)回収できるかどうかも考えるだろうから,まれな疾患では治験を組むのもむずかしい.病態についても,新知見がないと学会でもなかなか取り上げてもらえない.
今号のテーマは「陽の当たらない疾患」である.2024年12月に福島医科大学が主催した日本皮膚免疫アレルギー学会学術大会で講演いただいた内容をいくつか執筆いただいた.衛藤光先生には高齢者の臀部角化性苔癬化皮膚について解説いただいた.日常診療でみる機会はたまにあるが,視診で診断がつくので生検まで施行することは少ない.筆者の教室で生検した症例はアミロイド陽性だったが,外的刺激によって変性したケラチノサイト由来のアミロイド蛋白が表皮直下に沈着するのが通常と思っていたので,アミロイド陰性のことが多いとのことで少々意外だった.水川良子先生には,Ashy dermatosisと固定薬疹について,両者の鑑別や疾患を疑った際の診断の進め方,最近の考え方について執筆いただいた.筆者は昔から,Ashy dermatosisの原因は薬剤だと思っている.小児が感冒症状で受診すると数種類の内服薬を処方される.これまで内服歴のあるすべての薬剤から原因薬をみつけ出すのはむずかしいので,成書には原因不明と書いてある(と思っている).先述の学会では筆者自身でも陽の当たらない疾患について話をしたが,その中で主に取り上げたのは弾性線維の疾患と脂肪織の疾患である.弾性線維の疾患は,先天性,後天性のものがあるがどちらも日常診療で遭遇することはまれである.後天性の疾患は,遺伝子変異,光老化,Advanced glycation end-products(AGEs),senescence associated secretory phenotypes(SASP),autophagyなども関連すると思われ,今後の研究の進展に期待したい.「統計」ではLichen purpuricusを取り上げた.慢性色素性紫斑は立ち仕事や下肢循環障害を背景に生じ,薬剤性はほんの一握りで,原因不明なことが多い.治療もよいものがなく困る疾患である.
ほかに,近年みかけることが少なくなったが非常に重要なウイルス感染症(麻疹)をはじめ,さまざまな臨床例を執筆いただいた.いつも思うのだが,テーマがありふれたものでない場合,症例を集めるのに苦労する.今回執筆いただいた先生方に深謝します.