大学生だった桜は交通事故に遭い、右腕を喪う代わりに霊の存在を知覚するようになる。留年が決まり、家で自堕落に過ごす桜を見舞いに来た友人の東雲は、山で遭遇した自分を助けてくれた謎の女性のことを打ち明け、彼女にもう一度会いたいという。山に入った桜と東雲を迎えに来た女性は、山を治めている人物の使いであり、自らを葛葉と名乗った。葛葉は帯刀と名乗る老人の元へ二人を案内する。迷家の当主である帯刀はこれ以上進むべきではないと二人を止めるが、東雲は山中で逢った女性の元にどうしても行かなければならない、と強行する。友人の結末を見届けようと東雲と山奥へ進む桜が見たものとは……(「古神」)。ほか、県庁対策室に寄せられた相談は図書館で頻発するスタッフの自殺。桜が不在の為、部長の藤村から紹介された女性霊能力者、柊と共に不審死の解決に向かう(「重科」)。代々続いてきた造り酒屋がその長い歴史に幕を閉じた。依頼人の女性は繁栄を支えてきた「御胤様」をお返しせねばならないという(「螢火」)。ほか序文を含む全7篇。