1878年、横浜に上陸した英国人女性イザベラ・バードは、日本での旅行の皮切りに、欧米人に未踏の内陸ルートによる東京・函館間の内陸踏破の旅を敢行する。苦難に満ちた旅の折々に、彼女はみずからの見聞や日本の印象を故国の妹に書き送った。
世界を廻った大旅行家の冷徹な眼を通じて、維新後まもない東北、北海道の文化、習俗、自然などを活写した日本北方紀行。新訳により原典初版本を完訳。挿画も全点掲載。
「 一八七八年四月、わたしは母国を離れて前にも効果のあった方法で健康を回復するよう勧められ、日本を訪れることにした。気候のすばらしさよりも、日本には新奇なものがとびきり多くあり、興味がつきないはずだという確信に惹かれてのことである。ひとりぼっちで療養する身にはこれがとても本質的なところで、楽しさと健康の回復をもたらしてくれるのである。気候にはがっかりした。とはいえ、日本はうっとりと見とれる国ではなく研究の対象となってしまったものの、興味は予想をはるかに超えた。
本書は「日本についての本」ではなく、日本で行った旅の話であり、日本の現状に関する知識を広げるためのなんらかの足しになろうとする試みである。」(「まえがき」より)