デビュー作にして第174回芥川賞候補作! 第62回文藝賞受賞作。
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宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描き、新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。
「私」であることを必要とされない労働において、「私」を保ち続けることはいかにして可能か?時代の閉塞感をこれでもかと執拗に抉りだす圧巻のデビュー作。
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\\小川哲氏、角田光代氏、村田沙耶香氏、推薦!//
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こんなに不気味で心地の悪い小説は、高度な技術、強い決意、正確な批評眼がなければ書けない。とにかく周到でストイックな小説。
――小川哲(文藝賞 選考委員)
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共感も感情移入もさせず、4人は人間性をも感じさせず、現実か妄想かもはやわからないのに、それでも「読ませる」力のある小説だった。
――角田光代(文藝賞 選考委員)
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計算された不気味さの中を歩く仄暗い快楽の中にいつのまにか導かれていた。
次の作品世界を読みたいと感じる小説だった。
――村田沙耶香(文藝賞 選考委員)
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薄霧のたちこめる宅配所。粛々とはたらく作業員たちのあいだで、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。一日中ほどんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、箱の中身と妄想の「答え合わせ」をしたいという欲望が安を蝕んでいく。あるとき思いもよらない理由から、決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになってーー。
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装幀:川名潤
装画:杉野ギーノス