はじめに「筋肉」というと,アスリートたちの隆々と盛り上がった上腕二頭筋や分厚い胸板,くっきり割れたシックスパックといった,華麗なフォルムに憧れを抱く人は多いのではないでしょうか。
しかしそれ以前に,筋肉とは立つ・歩くといった行動だけではなく,会話や呼吸,食べ物の咀嚼や嚥下といったありとあらゆる行動の動力源となる組織です。さらに,姿勢を保ったり,排便をしやすくしたりするなど,体や内臓のはたらきを支える役割もにないます。また,筋肉は伸縮によって,血液の循環を助けるポンプのようなはたらきをします。そのため,筋肉は「第二の心臓」ともいわれているのです。そう,私たちは筋肉なくしては生きていくことはできないのです。
筋肉は,個人差はあるものの,成人では体重の約40%にもおよびます。近年,この筋肉が,実は身体を動かすだけではなく,ほかの組織や臓器とエネルギーや情報のやりとりをしながら,全身の健康状態をコントロールしていることがわかってきました。なんと,筋肉を動かすと,脳が活性化したり,筋肉から健康につながるホルモンが分泌されたりするようなのです。
そのため,運動不足や加齢によって筋肉量が減ることは,たんに運動能力を低下させるだけでなく,身体や心の不調にもつながります。ですから,健康を保つためには,筋肉を鍛えることが必要不可欠なのです。
本書は,体を動かす筋肉の紹介をはじめ,筋肉と健康とのかかわり,筋肉の鍛え方やケアについての講義です。「マッチョ」だけではない,筋肉の真価を知り,健康に対する意識改革のきっかけにぜひお役立てください。