今日では,インターネット上の検索エンジンでキーワード検索すれば,個別の情報は簡単に得られる。しかし,本書のメインターゲットである生命科学分野の実験系研究者やこれからバイオインフォマティクスを学ぼうとする大学院生にとっては,特に統計関連の記述は難解であろう。巷に溢れている統計関連書籍の記述内容もまた,意味不明だという声をよく聞く。
本書は,トランスクリプトーム解析を行うための一連のスクリプト集である著者の2つのウェブページ「(Rで)マイクロアレイデータ解析; http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r.html」および「(Rで)塩基配列解析; http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html」を体系的にまとめた初の書籍である。
まず手元にある実際のデータやその解析結果を示し,解釈の仕方を述べてから一般論に導く記述形式を採用している。主な目的は,実データの解析結果を徹底的に眺めることで,統計的な感覚や数式の感覚を身につけることである。一般に,書籍中に記載されているRパッケージや関数は,パッケージ自体がなくなってしまっていたりオプションが変更されるなど比較的早期に陳腐化していく。本書は,もちろん執筆時点で最新の解析手順やRの関数を利用しているが,それらの賞味期限は短いことが予想される。そのため,最新の利用手順は2つのウェブページを参考にされたい。本書は,トランスクリプトーム解析のための二大技術であるマイクロアレイとRNA-seqをRで自在に解析するための基本的な考え方や注意点を体系的にまとめたものである。