制度でもマニュアルでもない
利用者・スタッフ・医療従事者との対話でつくる理想のケア
制度の枠組みと、目の前の利用者に寄り添いたいという思い。
その間で葛藤する介護現場から、
“その人らしい暮らし”を支える支援のあり方を考える。
「それは介護保険の規定外ですから」――。
介護の現場では、利用者の願いに応えたいと思いながらも、「制度上できません」と伝えざるを得ない場面が少なくありません。
掃除のついでに窓を拭いてほしい。
昔から通っていた店へ行きたい。
病院の付き添いをお願いしたい。
本人にとっては切実な願いであっても、介護保険制度の枠組みの中では対応が難しいケースがあります。
しかし著者は、「制度を守ること」と「目の前の人に寄り添うこと」は、本来対立するものではないと語ります。
大切なのは、「なぜその人がそう望んだのか」を考え続けること。
言葉の奥にある思いや、その人が歩んできた人生に目を向けることで、制度の範囲内でもできる支援や、新たな関わり方が見えてくるのです。
著者は、在宅介護・訪問介護の現場を長年経験し、現在は定期巡回・随時対応型訪問介護看護を運営する会社の代表を務めています。経営者となった今も現場に立ち続け、利用者、家族、スタッフ、医療従事者と向き合いながら、「理想の介護とは何か」を問い続けてきました。
利用者の言葉にならない思いをどう酌み取るのか。
家族の不安や希望と、本人の意思をどうすり合わせるのか。
介護職、看護師、医師など多職種とどのように連携するのか。
そして、スタッフ一人ひとりが安心して働き続けられる職場をどうつくるのか。
本書では、介護現場で起きている制度と現実のギャップ、利用者の思いに寄り添うための工夫、離職や人材不足に悩む介護業界の構造的課題まで、著者自身の経験をもとに具体的に描いていきます。
理念を掲げるだけでは、組織は変わりません。
マニュアルを整えるだけでは、人は育ちません。
大切なのは、現場に入り、問題を共有し、共に悩み、語り合いながら、より良い支援をつくっていくことです。
本書は、介護を単なる制度運用としてではなく、「その人らしい暮らし」を支える営みとして捉え直す一冊です。
制度と現場の間で悩みながらも、「より良い介護とは何か」を考え続ける介護従事者、組織づくりに向き合う介護事業者、そして利用者一人ひとりに誠実に向き合いたいすべての人に読んでほしい介護事業論です。