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寄附文化とスピリチュアリティ

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寄附文化とスピリチュアリティ

チャリティ、パトロネージ、そして、フィランソロピーにせよ、自らの能力と幸運によって巨富を得た人々が納税とは別に、自発的に、寄附という行為を通じて私的な富を社会に供出するのはなぜか。もちろん、再配分を通して、社会や国家から好ましい人物として見られたいという政治的、経済的、社会的、心理的背景もある。しかし、富を得たすべての人々が寄附をするとは限らない。そこには、宗教的な背景、あるいは、特定の宗教とは異なる広い意味の現代では、スピリチュアリティと呼ばれる宗教性の働きもあるのではないか。人はなぜ寄附をするのであろうか、寄附をすることには、寄附をしないことと比べてどのような精神性、あるいは、心理的な違いがあるのであろうか。私は、寄附をすることが人々に対してどのような精神的な安寧を与えるのかについて、深めたいと考えるようになった。いつか、その課題に挑戦してみたいと願っていたが、上智大学に大学院実践宗教学研究科が創設されることによって、本格的に挑戦する可能性が開けることになった
本書は、近代日本における寄附文化を渋沢栄一と大原孫三郎を対比させながら、欧米とは異なる独自性を探求することを目的としている。
従来の渋沢栄一・大原孫三郎のフィランソロピーの経済、政治、社会、文化的研究の中で見落とされていた、近世日本の村落共同体における「モラル・エコノミー」や「相互扶助の経済」に注目して欧米のフィランソロピーにはない、特定の宗教に影響されない篤志の実態を明らかにする。一方で、渋沢や大原という実在したフィランソロピストが経済的な成功を収め、同時に篤志活動においても大きな足跡を残した背後で働いていた宗教やスピリチュアリティについても解明する。とくに、両者の青年期における精神的遍歴を詳細に捉えることで、渋沢・大原研究に新たな視座を提供することを試みる。
尚、本書は、2020年度に上智大学に学位請求論文として提出され、博士号の学位を取得した論文を一部加筆修正したものである。

本書「まえがき」より抜粋
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