不倶戴天の仇―民国期論客の日本論!戴季陶(1891~1949)は孫文の秘書兼通訳、蔣介石政権の思想的支柱であり、青年時代に日本に留学した国民党きっての日本通としても知られている。本書は、五四時期に発表された「我が日本観」(1919)から国民革命時期に発表された『日本論』(1928)に至るまでの彼の対日観・対外観に焦点を当て、従来の研究成果を有機的に再編・総合しつつ、「戴季陶主義」という名称で知られる彼の政治思想との内的連関性、および中国革命の進行に伴う変化を検討する。なお、巻末に戴季陶の五四時期の対日観を窺う上で必須の資料である「我が日本観」全訳を付す。
●編著者のことば
戴季陶の思想評価に関しても、やはりこれまで曖昧にされて来た部分がある。それは例えば孫文との思想的距離についてである。確かに、戴季陶の前半生の政治生活は孫文と共にあり、孫文から受けた影響には多大なものがあったことは言うまでもない。しかし、全ての面で彼が孫文と一体であったと見なすことはその思想的独自性を否定し、延いては孫文死後の彼を安易にオポチュニストとして捉えることになりかねない。……本書はかかる印象論的立場を排除し、孫文と一体であった部分とそうでなかった部分を確認しつつ、思想的実像としての戴季陶の対日観を導き出して行くことを目的とするものである。(序章「戴季陶と対日観をめぐって」より)