口絵(中央革命根拠地の範囲と客家居住区)
まえがき――新たな客家論の構築に向けて
Ⅰ 客家の実像――歴史と革命の中で 矢吹 晋
1 客家伝説の誕生
(1)黄巣の言葉から生まれた葛藤伝説
中国史上「最大最長の伝説」/日本の落人伝説との対比/客家伝説の拡大
(2)革命伝説その1――井岡山
土籍と客籍の矛盾/袁文才、王佐の「処分」
(3)革命伝説その2――富田事変
内ゲバ第二幕の開始/「内部の敵」におびえる紅軍/吹き荒れる粛清の嵐/タブー解禁の経過
(4)客家伝説を超えて
太平天国と紅軍の長征/改革開放後の「客家学」復活/客家のイメージ
2 客家のルーツを探る
(1)客家研究の始まり
(2)客家「聖地伝説」の矛盾――羅香林批判
寧化石壁伝承/牧野=瀬川仮説と謝重光仮説
(3)歴史資料から論じる
「主戸・客戸」解釈論への批判/「族譜」妄信の過ち/「客家=中原士族」説批判
(4)畲族と漢民族との関係
畲族先民について/畲族と客家先民との交流
(5)言語から見た客家
橋本=諏訪仮説/アジア大陸のミクロコスモス
3 客家社会の形成と発展
(1)客家民系の開放的システム
文化概念としての客家/客家民系が来た道/南遷以前の居住地/山地で生きる
(2)呉松弟による羅香林批判
「客家先民」と「客家源流」/源流は南宋移民
(3)客家民系の広域的拡散
南方各地そして台湾へ/南洋への移住
4 開かれた「中華世界」への道
(1)他称と自称のはざまで
(2)その後の客家学
(3)連邦国家の初心に立ち返る
人物略記
参考文献
Ⅱ 「客家」再発見の旅――革命の故地で考える 藤野 彰
はじめに――「客家」取材ノートから
1 四川省広安――鄧小平「客家説」を追う
改革開放の総設計師を生んだ土地/鄧小平故居を襲う市場経済の波/鄧小平のルーツと「広東客家」説/鄧小平の「客家」アイデンティティー/洛帯鎮に見る四川客家
2 江西省井岡山――毛沢東と「客家の緑林」たち
農村根拠地革命の原点/紅米とカボチャと革命/「客籍」が支えた井岡山闘争/「土籍」と「客籍」の矛盾/袁文才と王佐の悲劇
3 江西省瑞金――「客家」ソビエト共和国の実像
鄧小平と江西の因縁/客家文化圏に重なる中央根拠地/長征の陰に客家あり/瑞金客家の豊かな食文化
4 湖南省瀏陽――悲運の「客家総書記」胡耀邦
湖南客家の熱い血/「紅小鬼」の郷里と判官贔屓/「不公平」憎む客家魂/湖南客家をめぐる遺聞
5 広東省梅州――「客都」が育んだ葉剣英の革命精神
客家の根拠地/梅州につながる多彩な人脈/「華僑」出身の元帥・葉剣英/客家の気概
参考文献
Ⅲ 対論 なぜ今、客家に注目するのか 矢吹 晋×藤野 彰
土楼の起源について/中国共産党史から消された客家/日本、そして中国における客家認識/中国革命史の中の客家/「中華民族」宣揚の背景/赤嶺畲族郷を訪れて/中国のゆくえ/客家を見て、中国が見える/付・日本と中国の文献に見る客家
あとがきに代えて――私の客家・漢民族認識のあゆみ 矢吹 晋
あとがきに代えて――「客家」問題と中国の未来 藤野 彰
事項索引/人名索引