【書評】
「肝臓専門医になるための待望の一冊―これで対策バッチリ」
毎年秋に行われる肝臓専門医認定試験の問題のなかから,教育的見地で選ばれたものが雑誌「肝臓」に解答と解説付きで掲載されますが,さらにそのなかから選び抜かれた良問が,本書には15のカテゴリー別に掲載されています.その内容は,肝臓の生化学,解剖,生理から,肝疾患の内科的,外科的診療,画像診断,さらには医療費助成と多岐にわたり,肝臓専門医に求められる専門知識や経験の広さや深さを物語っています.前版の第6集より本書の発刊までに3年が経過していますが,その間に普及してきたMASLD/MASHと呼ばれる新しい疾患概念も取り上げられており,疾病構造がウイルス主体から生活習慣主体に変化しつつあることが反映されています.
本書では問題の解答や解説も問題作成者が担当しているために,問題作成の意図や重要性が読者に理解しやすくなっています.肝臓専門医を目指す専攻医にとって,試験の準備だけではなく,専門研修中に修得した知識や経験を再確認するためにも最適な刊行物といえます.
一方,同じく南江堂より2024年11月に発行された『肝臓専門医テキスト改訂第4版』は,もともと肝臓専門医の教科書として日本肝臓学会が企画作成したものであり,肝臓・胆道の解剖,機能から,肝疾患・胆道疾患の病態生理,診断法,治療法まで基本的な知識や最新情報が取り上げられています.さらに「行政と肝疾患診療」という項目では,肝炎医療費助成制度をはじめとして肝臓専門医が関与すべき社会制度についても紹介されています.そのため,本書の問題や解説をより深く理解するうえで,また内容を補完する意味でも,『肝臓専門医テキスト』は最適な解説書と位置づけられます.
近年,疾病構造の中心がウイルス性肝疾患から生活習慣関連肝疾患にシフトし,患者さんの裾野が広がってきていることから,肝臓専門医への社会からのニーズや期待度は今後ますます高くなることが予想されます.一人でも多くの先生方が肝臓専門医の資格を取得し,国民の健康増進に貢献されることを祈っております.
さて,ご存知のように,日本専門医機構と各領域学会との連携により,内科,外科等の基本領域に続き2023年度よりサブスペシャルテイ領域の専門研修が開始されました.新専門医制度のもとでは消化器系専門医においては,肝臓領域は消化器内視鏡領域とともに,消化器内科領域の補完領域という位置づけであり,消化器内科専門医を取得したうえで肝臓専門医や消化器内視鏡専門医を取得するという制度になっています.しかしながら,現時点(2025年12月現在)では,肝臓領域と消化器内視鏡領域との並行研修(二つの研修を同時に並行して行うこと)の詳細については専門医機構と協議中です.そのため過渡的な対応として,2023年以前に医師免許を取得し2030年までに受験される場合は,現行制度を満たすことで肝臓専門医認定試験を受験することが可能です.したがって,そのような受験資格をおもちの先生方は,速やかに本書をご購入のうえ,試験準備を始めていただきたいと思います(詳細は日本肝臓学会ホームページ「肝臓専門医の申請を希望される方へ」をご覧ください).
本書は,肝臓専門医を目指す専攻医,専攻医を教育する指導医に加え,専門知識や経験を確認するとともにupdateされたい肝臓専門医の先生方にもお勧めできる一冊です.肝臓専門医テキストと合わせて活用され,肝臓専門医資格の取得のみならず,日常の肝疾患診療にもお役立ていただけることを期待しております.
臨床雑誌内科137巻2号(2026年2月号)より転載
評者●佐々木 裕(日本肝臓学会肝臓専門医制度審議会・肝臓専門医試験委員会 前委員長/熊本大学名誉教授)