本邦では,薬物治療から手術的治療の介入まで,関節リウマチ患者のトータルマネジメントを整形外科医が担っている.また,7年ぶりに関節リウマチ診療ガイドラインが改訂され,関節リウマチの診療は変革期にある.本号ではリウマチ診療の現状を解説しつつ,実臨床で役立つタイムリーな情報を掲載している.関節リウマチの評価・手術的治療・薬物治療もちろん,脊椎関節炎・リウマチ性多発筋痛症など,整形外科診療に紛れ込むリウマチ性疾患についても情報が得られる.
【序】
関節リウマチ(RA)に対する薬物治療は,1999年にアンカードラッグとしてメトトレキサートの使用が開始され,さらに2003年には生物学的製剤,2013年にはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬も加わって,treat to target(T2T)という治療戦略のもと,診断早期から積極的に薬物治療が行われるようになりました.ここ20年で大きく変革した薬物治療により寛解症例が多くなり,整形外科医が行う手術的治療は激減するのではないかといわれましたが,本誌に投稿された疫学研究によれば,活動性の高いRA症例の手術件数は漸減しているものの,低活動性のRA症例の手術件数は減っていないようです.また,部位別には膝関節と頚椎に対する手術件数のみが激減し,それ以外の部位に対しては維持されているということです.
この間に,画像診断についても関節エコーによる滑膜炎の評価が一般化し,CTでも腱を含めた軟部組織の評価やPET‒CTによる炎症の評価も可能となりました.また,肩・股・膝といった大関節を除く,中・小関節における機能回復を目的とした手術的治療についても,数多くの投稿論文に最新知見が網羅されています.さらに,RA患者のトータルマネジメントに対する多職種介入の取り組みや,脊椎関節炎・リウマチ性多発筋痛症など整形外科診療に紛れ込むリウマチ性疾患について紹介する論文も投稿されています.
各薬物の実際の使い方や副作用,使用上の留意点を含め,本誌ではまさに「バイオ時代におけるリウマチ性疾患の診療」の現在地点を示すことができたと思います.多くの経験に基づく示唆に富む論文を,明日のリウマチ診療に活かしていただければ幸いです.
2023年10月
横浜市立みなと赤十字病院
大川 淳