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商品説明
本書は以下のような構成で、一六世紀イタリアにおけるマニエラの多様性と魅力的特質を具体的な作品を見ながら論じている。マニエリスムという芸術的潮流は、ジュリオ・ロマーノによって露骨で濃密なエロスを充填されて観者の身体を刺激し(第1章)、チェッリーニにおいては製塩と彫金という二つの領域を同調させる原理となり(第2章)、ブロンツィーノによってフィレンツェ公妃の政治的・社会的な身体を表象するために驚異的な質感を与えられた(第3章)。世紀末ローマでは、聖堂の装飾全体が一六世紀的な多様なマニエラの集大成、いわばカタログ・レゾネとなり(第4章)、フェデリコ・ズッカリの家におけるマニエラはフィレンツェの美術とその王者(とされた)ミケランジェロとの自らの連続性を証明するものとなり(第5章)、ボマルツォのサクロ・ボスコに現われた視覚的スペクタクルは美術史学者カルヴェージから「マニエリスムの現象学」の宝庫と呼ばれた(第6章)。すなわち、一六世紀イタリアにおいて、美術作品に表われるマニエラをその創造者の一部または分身であるかのようにとらえ、身体的経験をもたらす媒介とみなす「時代の目」が存在した。そのようにして理解されたマニエラによって生みだされる身体的経験は、蛇状曲線のような作品内部のモティーフとしてばかりでなく、作品の素材、タッチやマチエール、さらには準備から仕上げまでの創造過程そのもののなかに分かちがたく結びついていた。そして時にはそうしたマニエラにエロティックな身体的経験と意味が充填され、美術家によって誇示されたり、あるいは観者によって賛美されたりすることもあった。これまでしばしば、そして現在もなお、マニエリスムという用語自体への疑念がしばしば提示されてきたが、マニエリスムとかつて呼ばれたことのある美術的現象そのものがもつ特異な魅力、およびこの概念が美術史学に対して提示する問題は今も変わらない。結論として本書が明らかにするのは、マニエラの考古学および「時代の身体」への新たな視座である。
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