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生き続ける聖典クルアーン

生き続ける聖典クルアーン

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商品説明
イスラーム世界の生活の中に、朗誦として、またグッズとして浸透するクルアーンの章句。

人類学的なフィールド調査と文献研究を組み合わせ、イスラームの「メディア装置」としてのクルアーンの実態を浮き彫りにする、最新のクルアーン研究。

 

●著者紹介
小杉麻李亜(こすぎ・まりあ) 
1981 年生まれ。立命館大学文学部卒業,同大学院先端総合学術研究科博士課程(一貫制)修了。博士(学術)。日本学術振興会・特別研究員(DC1,PD),京都大学大学院研修員(アジア・アフリカ地域研究研究科),ニューヨーク州立大学客員研究員,ブルネイ・ダルサラーム大学客員研究員などを経て,現在関西大学文学部准教授(比較宗教学専修)。文化人類学,宗教聖典研究,比較イスラーム社会論専攻。『アラブの音文化――グローバル・コミュニケーションへのいざない』〔共著〕(田邉尚雄賞受賞)(スタイルノート,2010 年),『イスラーム書物の歴史』〔共著〕(名古屋大学出版会,2014 年),『大学生・社会人のためのイスラーム講座』〔共著〕(ナカニシヤ出版,2018 年),他
目次
 表記法等について
 はじめに

序章 今を生きる
 1 異なるものは同一である
 2 対極にある2つの社会
 3 近代がすべてを溶かす
 4 生まれ変わる言葉
 5 本書の狙いと目的
 6 3群の基本概念
 7 本書の主題と構成


第I部 生き方のソースコードとしてのクルアーン

第1章 ムスリム社会のリアル(実態イスラーム)
 1 フィールドで出会う
 2 分量と種類の有無
 3 音として流れる
 4 不在の語り手

第2章 クルアーン研究の今日の地平
 1 クルアーンの成立
 2 東洋学による解体
 3 現象学的/意味論的ブレイクスルー
 4 記号論的分析の意義

第3章 メディアとしてのクルアーンとソースコードの社会的作用
 1 力を生み出す代理システム
 2 イスラームのメディア装置の特徴
 3 イスラームの多神教的側面
 4 「ソースコード」「命令コード」としてのクルアーンの登場
 5 3つの命令コード
 6 メディア装置論の構成


第Ⅱ部 「記譜」された音としての書物

第4章 音の補助具としての「書物」の形成
 1 クルアーンの書物化
 2 ウスマーン版の成立と初期写本
 3 「神の言葉」を記す技術と二大書体
 4 共有される威信財としての書物
 5 信仰共同体の2つの「ウスマーン本」

第5章 20世紀の「ウスマーン版」へ
 1 刊本時代の幕開けとアズハル・レジーム
 2 サウディアラビアによる大量配布と刊本の検品
 3 現代における刊本の校閲と朗誦学者
 4 刊本時代の特徴とデジタル化


第Ⅲ部 クルアーンの原型をたどる

第6章 イブン・アーシュールの章名論
 1 現代から古代へワープすることは可能か
 2 2つの学問領域
 3 イブン・アーシュールの位置付け
 4 イブン・アーシュールの立論の特徴
 5 いかに名付けられたか

第7章 章の名付けが意味するもの
 1 「標準版の確立」という定説
 2 書承の章名と口承の章名

第8章 口誦テクストの操作
 1 操作テクニックをどうやって復元するのか
 2 音をストックし管理する
 3 テクストに保存された政治的な文脈
 4 ムハンマドを取り巻いていた状況


第IV部 音としてのクルアーン

第9章 朗誦の復興
 1 音楽的側面
 2 言葉と旋律の関係

第10章 全国朗誦大会
 1 大会の舞台
 2 朗誦を審査する
 3 国境を越えて流通する音

第11章 実演の計量分析
 1 リサイタルの録音という珍しい例
 2 リサイタル内容の検証
 3 ポーズとリフレインの比較

第12章 女性と聖典
 1 女性たちの学習活動
 2 女性朗誦家をめぐるコンフリクト


第V部 日常に埋め込まれた断片

第13章 神を忘れない
     ――礼拝(サラー)――
 1 法学的規範と実践
 2 礼拝(サラー)の実態に迫る方法
 3 礼拝(サラー)の前後と誰とおこなうか
 4 行程と身体動作および文言
 5 地域的・個別的な差異

第14章 神を埋め込む
     ――礼拝の中のクルアーン――
 1 典拠としてのクルアーン
 2 章句が関与する度合い
 3 フィールドで内的意味を探す
 4 叡智(ヒクマ)と一般信徒
 5 クルアーンを発現させる
 6 礼拝が作り出すしもべ(アブドゥ)

第15章 日常を聖化する
     ――日常発話――
 1 聖なる場所ではなく
 2 聖なる句
 3 無自覚な発話に対する聞き取り

第16章 この世を寿ぐ
     ――グッズ,アクセサリー,ステッカー――
 1 使用実態から見る傾向と相関性
 2 オーラルのマテリアル化


第VI部 クルアーンがある空間

第17章 クルアーンが作るイスラーム的エージェンシー
 1 イスラーム的生と自律性
 2 徴付けられた世界
 3 神話世界と成立宗教
 4 供犠(ザブフ)と神の名を唱えること(バスマラ)
 5 欲望と帰依の主体

第18章 受肉するソースコード
 1 ディバインリーダブルから,ソサエティリーダブルへ
 2 前近代的バルクの形成
 3 コンパイラーとバルクを失った時代


おわりに
 ――「現代のクルアーン」を追いながら――


補論1 クルアーン研究史
 1 近代的学問としての東洋学におけるクルアーン研究
 2 東洋学の方法論的な問題点と内部からの批判
 3 井筒俊彦によるブレイクスルー
 4 民族音楽学からの貢献
 5 ミクロ化と啓典解釈学研究への移行

補論2 ロンドンで見たクルアーン学会
 はじめに
 1 第6回大会の日程と内容
 2 クルアーン研究の動き
 おわりに

補論3 礼拝研究史
 1 範疇をめぐる人類学と宗教学の溝
 2 東洋学における礼拝研究

 
 註
 参照文献
 あとがき
 初出一覧
 人名索引
 事項索引
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