左膳が奔る 市が斬る
小説世界の盲人たちはただ強いだけじゃない。
優しくてあたたかい。そして、したたか、欲も張る。
そのえがかれ方に時代を探る異色の文芸評論集
私は本書をまとめるに当たって、自分の胸底にこびり付いていた時代・歴史小説やその人物像に対する先入観・固定観念のようなものをできるだけぎ取り、再度「ヒーロー群像」としての盲人たちから「市井に生きる」盲人たちまで幅広く、複眼的な視点で「盲人像」をとらえ直してみました。この作業を通して、多くの盲人たちが封建制社会のなかで常に不憫な存在であり、偏見や差別に満ちた重たい日常を背負わされてきた事実とともに、その一方で、したたかでたくましく、ユーモアたっぷりに楽しく暮らしてきた盲人たちにも出会うことができました。(「はじめに」より)
【取りあげた作品と盲人】
左膳(林不忘「丹下左膳」)
市(子母澤寛「座頭市物語」)
柚木敬之進(五味康祐 「盲刃」)
秋月六郎太(柴田錬三郎「運命峠」)
玉路(中山義秀「塚原卜伝」)
前川孫兵衛(菊池寛「ある敵打の話」)
堀内某(池波正太郎「隠れ蓑」)
熊田十兵衛(池波正太郎「熊田十兵衛の仇討ち」)
文絵(山本周五郎「朝顔草紙」)
三村新之丞(藤沢周平「盲目剣谺返し」)
明石覚一(花田春兆「殿上の杖」)
玄城(長谷川伸「夜もすがら検校」)
和一(長谷川伸「杉山検校」)
石本検校(菊池寛「石本検校」)
平蔵(山田風太郎「からすがね検校」)
山本勘助(井上靖「風林火山」)
山本勘助(宮本昌孝「紅楓子の恋」)
政宗(海音寺潮五郎「伊達政宗」)
政宗(司馬遼太郎「馬上少年過ぐ」)
刑部(吉川英治「大谷刑部」)
鑑真(井上靖「天平の甍」)
鑑真(永井路子「氷輪」)
保己一(山手樹一郎「塙検校」)
秋成(岡本かの子「上田秋成の晩年」)
馬琴(杉本苑子「滝沢馬琴」)
豊ノ市(池波正太郎「喧嘩あんま」)
多の市(野村胡堂「九百九十両」)
町小路左門(柴田錬三郎「岡っ引どぶ」)
徳の都(平岩弓枝「白藤検校の娘」)
おあい(朝井まかて「阿蘭陀西鶴」)