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鈴木花蓑の百句

鈴木花蓑の百句

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商品説明
◆写生の鬼

流し雛堰落つるとき立ちにけり

「ホトトギス」昭和八年八月号の雑詠句評会で、「男の雛の仰向きたまひ波の間に 誓子」の評に先だって花蓑は、「流し雛と云ふ行事はそれだけでも大変興味が持てる。(略)雛を流すといふ事は必ずしも紀州地方許りではなく、武蔵野探勝会の際にも道端の流れや、松の木の下や、そんな所に納めてあるのが見受けられる。」と述べていることから、この花蓑の句は、あるいは武蔵野の道端での写生句であるかもしれない。
古雛は、仰向けにあるいは俯せなって流されて行く。途中に堰があって雛は一瞬立った、その瞬時を花蓑の目は逃さなかった。一瞬の把握によって雛は生命を獲得した。「流し雛」と上五に置き、下十二音で一挙に読み下す。躍動感が見事である。
(本文より)

◆花蓑の俳人としての活躍については年月を追ってつまびらかにしたが、大正末期から昭和五年ごろ迄、虚子も大いに認めた活躍ぶりであった。即ち「東大俳句会」ができて秋桜子、誓子、素十、風生、たけし、泊月、青邨らと対等に競い、引けをとることはなかった。かつて筆者が水原秋桜子にお目にかかったとき、〝花蓑に指導してもらった〟とおっしゃっていた。経時的に考えてみると花蓑は四S(水原秋桜子、高野素十、山口誓子、阿波野青畝)出現の為に母胎の役割りをした。花蓑の活躍が終るといよいよ俳壇のクライマックス四Sの出現となり、俳壇史に残る名句が次々と発表されていった。昭和六年、水原秋桜子は「自然の真と文芸上の真」を発表して「ホトトギス」を離脱した。即ち四Sの終焉であった。
俳壇において花蓑が居なかったならば、「ホトトギス」の純粋なる詩的遺産は、日本の文学史上に残し得なかったのではないか。
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