加藤楸邨の百句

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◆人間の業と向き合ふ



楸邨の句は難解だと言はれることが多い。僕は初学の頃から「寒雷」系の先輩方の話を聞いて育つたおかげもあり、楸邨の句がわかりづらいと思つたことがほとんどない。今回、解説を書くにあたり、その思ひがますます強くなつてゐる。わざと恣意的な解説を付した句もあるが、句の内容については、さほど外れてはゐないはずだ。
難解さとは句意のわかりづらさではない。いはゆる俳句的情緒、俳句的手法からの距離感が難解だと呼ばれてしまふ。
楸邨にはいつも加害者意識があつた。根幹は一市民=被害者としての怒り、悲しみなのだが、対象に入り込みすぎて、加害者側の意識に辿り着いてしまふのだ。哀しいほどの生真面目さだと思ふ。そしてこの加害者意識は戦争によつてますます強固なものになる。
楸邨の作句理念でもある「己れの内からの人間的要請」とはこの加害者コンプレックスと向き合ふことでもあつた。コンプレックスは個人のものなので、作者に向き合はねば見えてくるものではあるまい。楸邨が難解だと思はれる一因はこのことにあるのだらう。
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