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三橋敏雄の百句

三橋敏雄の百句

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商品説明
◆少数派としての矜持

窓越しに四角な空の五月晴(『靑の中』)

 敏雄は十三歳の頃に短歌に関心を持ち、たまたま改造文庫の北原白秋歌集『花樫』を求めたのを手はじめに、同文庫の歌集類を読み続けた。父は俳句を詠んでいらしたが、敏雄は俳句には全く関心を抱かなかったという。
 就職した書籍取次店「東京堂」で、五歳年長の先輩・渡辺保夫に出会い新興俳句を知り、山口誓子を知ったのだった。職場の句会に誘われ初めて出句したのが掲句。
 最初の句集『まぼろしの鱶』では省かれたが、その後に編まれた初期作品を纏めた『靑の中』の一句目に置かれている。「窓越しの」ではない「に」で、空の写生だけで終わらない思いを描いた。昭和十年五月、十五歳の作。

◆解説より
 「俳句研究」の「特集・三橋敏雄」の編集後記に高柳重信は、「三橋敏雄という名が俳壇に聞こえはじめたのは、いわば新興俳句運動の全盛期から晩期にかけてであるが、そのとき彼は、まだ十代の少年であった」「三橋敏雄の復活に俳壇が気づきはじめるのは、もはや昭和三十年の終りから四十年代にかけてであった」「まさに二度にわたって、きわめて出色の新人として登場したことになる」と書き、「伝統とか前衛とかいう単純な色分けの通用しない世界」と記している。
 敏雄の俳句との関わり方は、よい趣味、というものではなかった。よい趣味として程よい俳句に出会っていたなら深入りはしなかった筈。職場の先から誘われて出会ったそれは、芸術の神の采配によってか、風流韻事には遠かった。それは俳句の世界の中心にあるめでたいものではなかった。 
 後日、敏雄は、僕は少数派というところに思いがゆく人間、と言っていらした。まさに俳句界の少数派との出会い、そして共感であった。
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