小和田哲男氏(静岡大学名誉教授・小田原ふるさと大使)絶賛!
創業100年を超えるという企業が小田原には数多くある。江戸時代以前から続いている企業もあるというのだから、驚きである。なかでも、小田原で500年の歴史を重ねる「ういろう」は、この街を代表する老舗と言える。外郎家【ういろうけ】は京都時代から数えると650年も続いており、現当主の外郎武氏は25代目となる。
「ういろう」の名をもっとも世に広めたのは、歌舞伎十八番「外郎売」であろう。市川團十郎が口上する有名な「ぶぐばぐぶぐばく……」の長台詞は、現在でもアナウンサーや俳優の滑舌訓練に使われているというのだが、それを知る人は少ない。
小田原というと、戦国時代を切り拓いた梟雄・北条早雲を思い浮かべる人が多いだろう。北条五代は、100年間にわたって関東の覇者として君臨した。城下町全体を土塁と堀で囲った「総構(そうがまえ)」は、日本で初めての城郭都市であった。そんな勇猛な武将のイメージが強い小田原が、戦国時代でありながら、実は豊かな文化の花開く都市であったことはあまり知られていない。和歌、連歌、絵画、一節切、茶の湯などが盛んで、京の都からも多くの文化人が小田原を訪れていた。
本書では、「ういろう」の歴史を縦糸に、小田原にかかわる人々を横糸にして小田原を描いてみた。また、最終章では、「これからの小田原」というテーマのもと、現在市内で活躍されている方々の座談会も組んでいる。
北条早雲に招かれて京から小田原へ移住した外郎家は、医薬を生業としながらも、北条家の重臣として「軍師」と「外交」などの役割を担っていたとされる。25代当主へのインタビューによって明らかにされる外郎家の歴史を知ると、きっと読者は小田原を歩きたくなるだろう。そして7月、京都の祇園祭や静岡県森町の舞楽を観に行くことになるかもしれない。(ふかの・あきら)