在明の別 残月抄

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商品説明
『在明の別』は平安最末期に成った王朝物語の傑作であるが、長らく散逸したものと見なされ、現存することが分かったのは戦後になってからである。藤原摂関家存亡の危機を救うため、春日の神の加護のもと人間界に降誕したヒロインが、たった一人で嫡男と姫君、男女二人分の役割を果たす奇跡の物語は、性の偽装をモチーフとする『とりかへばや』の流れを汲みつつも、さらに複雑精妙な物語世界を描き出す。しかし従来は、解釈困難な箇所の続出する「天下の孤本」を、十分な校訂が施されないまま読むほかなかった。本書では、そのように難解をもって聞こえる物語本文を、文献学的方法を駆使して鮮やかに読み解くことで、ヴェールの向こうに朧げに見えていた物語世界を、くっきりと浮き上がらせることに成功している。

前編「『在明の別』を読む」では、後編「『在明の別』の本文校訂と読解」の各章でなされた検討結果に基づく新しい「校訂本文」を用いて、この物語の読解のポイントが、詳細かつ丁寧に解き明かされる。そのなかで、登場人物の複雑な絡み合いの中心にいるヒロインが、誰とどのような関係性を築いているかが、表現の微細な対応関係をも押さえながら解きほぐされてゆくさまは、壮大な謎ときを見るかのようである。竹取の翁のもとにかぐや姫がやってくるあの「物語の出で来はじめの親」を、氏の長者・左大臣のもとにヒロインが遣わされるというかたちに、大胆にスケールアップした『在明の別』の真骨頂は、本書によって初めて明らかとなる。
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