序章 本書の課題と構成 [飯塚一幸]
一 野﨑家の概要と先行研究
二 地方資産家・地方名望家研究と野﨑家
1 大規模豪農から地方名望家へ
2 御救の研究史と富裕者による救済活動
3 資産家資本主義論と野﨑家の経営
4 地方名望家研究の進展
5 地方資産家の文化的諸活動
6 地方資産家と日本の帝国化
三 本書の構成
第一部 地域社会の近代化と野﨑家
第一章 野﨑武左衛門の塩田開発と近世後期地域社会[定兼 学]
はじめに
一 備前国児島郡における野﨑家の塩田開発
1 野﨑武左衛門の塩田開発着手の頃
2 野﨑家の塩田開発
二 東野﨑浜の開発をめぐる諸問題
1 開発着工前の地域的諸問題―胸上村との漁業補償交渉―
2 開発権取得をめぐる問題―中島富次郎との争い―
3 開発着手後に生じた問題
三 瀬戸内諸浜・児島郡塩浜と野﨑家
1 瀬戸内諸浜と野﨑家
2 児島郡塩浜の協定
おわりに
コラム1 重要文化財 旧野﨑家住宅 [宮崎健司]
第二章 近世後期における野﨑武左衛門の福田新田開発 [山本太郎]
はじめに
一 福田新田の開発経緯
1 福田古新田の開発
2 福田古新田前附洲の開発目論見
3 幕府の見分役人の派遣
二 柳田村汲五平の新開築立工事
1 柳田村汲五平の福田新田開発計画
2 汲五平の新開築立工事の実態
三 野﨑武左衛門の新開築立への参入
1 新開築立方への任命
2 野﨑武左衛門と汲五平との議定書
四 新開請負人の実施工事の具体像と費用負担
五 福田新田の土地配分
六 野﨑家の所持地の変遷と小作地経営
おわりに
コラム2 茶道速水流と野﨑家 [宮崎健司]
第三章 幕末・明治初期の野﨑武吉郎
―〈児島五人衆〉としての活動から― [伊藤昭弘]
はじめに
一 児島五人衆について
1 児島五人衆の履歴
2 児島五人衆の形成と活動
二 岡山藩と児島五人衆
1 融通方の展開
2 融通方と児島五人衆
3 岡山藩商社と児島五人衆
三 廃藩置県後の児島五人衆
1 池田家と児島五人衆
2 商社設立の目的
おわりに
コラム3 祝事来客記録 [宮崎健司]
コラム4 野﨑家のお雛様 [三宅功一]
第四章 近代移行期における野﨑家の救済と「貧者」 [東野将伸]
はじめに
一 野﨑家の役職と家政における貧民救済
1 野﨑家の役職と職務
2 野﨑家の家政における貧民救済
3 慶応元~明治三〇年(一八六五~一八九七)における野﨑家への褒賞
二 幕末期の救済と「貧者」・「貧民」
三 明治初期の救済と「貧者」・「貧民」
四 明治一〇年代以降における「貧者」・「貧民」と救済
おわりに
第五章 野﨑武吉郎と三島中洲からみた明治期の地方名望家と漢学者 [町泉寿郎]
はじめに
一 幕末期における野﨑家と山田方谷・三島中洲の接点
二 明治前半期の野﨑武吉郎と三島中洲の関係
1 三島中洲の法曹としての経歴
2 田辺為三郎と手島知徳
3 「東野﨑濱鹽田碑」
4 『野﨑家家則』と『事務取扱規則』の制定
三 野﨑武吉郎の貴族院議員活動に対する三島中洲の支援
1 貴族院書記官笠井彰と書記官長金子堅太郎の紹介
2 「民法」「商法」に関する議事をめぐって
3 野﨑別邸(麹町区五番町)の購入
四 その後の野﨑武吉郎と三島中洲の関係
1 丹斐太郎の誕生
2 五猿翁西井多吉の顕彰に対する中洲の関与
3 迨暇堂の命名
五 『野﨑宗家家法』への三島中洲の関与
六 野﨑家と三島家の関係の深まり
1 三島家に対する武吉郎の援助
2 板倉家との縁談
3 海外の塩業調査に対する中洲の支援
おわりに
コラム5 日下部鳴鶴祝野﨑龍山華甲寿 [三宅功一]
コラム6 華胄絵師稲垣子爵の饗応 [三宅功一]
第六章 初期議会期における多額納税者議員野﨑武吉郎の政治活動 [飯塚一幸]
はじめに
一 多額納税者議員選挙と野﨑武吉郎
二 第一議会と多額納税者議員
1 野﨑武吉郎の要人訪問
2 多額納税者議員仮事務所の設置
3 貴族院での審議と多額納税者議員
4 東京邸の買取
三 貴族院会派の形成と多額納税者議員
1 地価修正派による多額納税者議員への働きかけ
2 貴族院における会派形成の進展
おわりに
第七章 帝国議会開設後の地方政治状況と多額納税者議員 [久野洋]
はじめに
一 「吏党」的志向
1 第一回総選挙
2 第二回総選挙
3 県知事との連携―災害土木費国庫補助獲得運動―
二 「超然主義」から「対外硬」へ
1 第三回総選挙と「超然主義」
2 第四回総選挙と対外硬運動
三 進歩党勢力と野﨑家グループ
1 野﨑定次郎と田辺為三郎の政界進出
2 県会での多数派形成
おわりに
第八章 近代における地方資産家の動向と地主制 [落合功]
はじめに
一 近代岡山県下における地主の動向と野﨑家
二 明治期における野﨑家の経営
1 地主経営(田畑宅地貸付所得)
2 塩業経営
3 その他
三 戦間期における野﨑家の資産動向
1 野﨑家資産の動向
2 地主経営
3 業経営
おわりに
コラム7 明治二七年頃の味野村 [前田昌義]
第二部 日本の帝国化と野﨑家
第一章 明治期の食塩直輸出運動と野﨑武吉郎 [中川未来]
はじめに
一 中国市場への輸出運動とその挫折
1 政府への働きかけと市場調査の実現
2 中国製塩認識の形成
二 ロシア沿海州・朝鮮市場の開拓
1 海外市場情報の流通と中国製塩認識
2 朝鮮市場への進出と朝鮮製塩認識の形成
三 直輸出運動の帰結
1 日清戦争と食塩輸出の政治問題化
2 遼東半島の塩業調査とその衝撃
おわりに
第二章 日清戦争と多額納税者議員
―野﨑武吉郎の動向を中心に― [飯塚一幸]
はじめに
一 野﨑武吉郎と近衛篤麿の関係の深化
1 近衛篤麿の岡山漫遊
2 第四回総選挙
3 近衛篤麿と京都鉄道会社
二 艦艇引揚事業
1 前提
2 沈没船引揚事業の展開
3 引揚事業の実施
三 清への塩輸出を目指して―大日本塩業同盟会の成立―
おわりに
コラム8 近衞家からの到来品 [宮崎健司]
第三章 野﨑家の育英事業と中国へのまなざし [中川未来]
はじめに
一 「地方」から「支那」へ
1 荒尾精の「貿易誘導者」育成構想
2 「貿易誘導者」白岩龍平の誕生
二 東亜同文書院への留学生派遣
1 「田舎青年」と「支那」
2 対外硬運動と「田舎青年」
3 日清戦後経営と東亜同文書院
三 「支那研究者」の養成
1 「実学研究」としての「新漢学」
2 義和団戦争と中国経験
3 「北方支那」への着目
おわりに
第四章 日清戦争後の対清事業と野﨑家
―白岩龍平と大東汽船会社を中心に― [望月みわ]
はじめに
一 白岩龍平による長江航路への参入
1 野﨑家史料から見る白岩龍平の日清貿易観
2 大東新利洋行の設立
二 大東汽船合資会社設立と野﨑家・岡山県人
1 郵便保護費の獲得
2 大東汽船合資会社設立の運動
3 命令実施に向けた資金調達
三 大東汽船会社の経営に対する野﨑家の援助
1 田辺為三郎の活動と株式会社化
2 湖南航路参入の運動と野﨑家・田辺
3 株式募集の実態
おわりに
第五章 義和団戦争と野﨑家
―手島知徳と田辺為三郎の渡清を中心に― [久保田裕次]
はじめに
一 日清戦後の国家的保護
1 日清戦争の影響
2 輸入塩の増大と台湾塩・中国塩
3 大東汽船の株式会社化
二 義和団戦争の発生と中国認識
1 湖南航路の開設計画
2 清朝による宣戦布告後
三 連合軍による北京占領後
1 手島の渡清
2 田辺の渡清
3 手島の再渡清
四 義和団戦争後における湖南航路と塩業
1 湖南汽船会社の設立
2 塩専売論
おわりに
コラム9 売用日記[三宅功一]
第六章 塩専売法の成立
―一九〇三年~〇五年 政界・官僚・塩業界・世論―[落合功]
はじめに
一 塩専売法案の提案
1 塩業界の動向―大日本塩業協会総会での議論―
2 塩専売法案の提出―第二〇回帝国議会(明治三七年三月二〇日―三月二九日)
3 議会閉会中―塩専売法案反対運動の展開と大日本塩業同志会の成立―
二 塩専売法の成立
1 塩専売法案賛成へ―政府・立憲政友会・憲政本党―
2 第二一回帝国議会(明治三七年一一月三〇日―明治三八年二月二七日)の開催
3 秋良貞臣と井上甚太郎
三 塩専売法の成立後の塩業界と野﨑家
1 大日本塩業協会存廃問題
2 塩専売法細則の制定と塩賠償価格問題
おわりに
あとがき
索 引