前著「財務会計の論理と構造」において、企業の経済活動は、資金、生産要素、生産物の三要素の連鎖的循環運行であると分析し、その構造を図式化した。資金、生産要素、生産物のいずれも会計上の「資産」である。したがって、企業の経済活動は、すべて資産で成り立っていることになる。
ここに、資産こそ会計の主役であって、資産のみによって会計の全構造が明らかにされると確信したのである。
有力な会計学説あるいは権威ある機関の概念規定では、いずれも資産は貸借対照表の一項目であり、他の二項目たる負債と資本との係わりのもとに、他の二項目と同列に論じられている。資産を負債と資本と同列に扱うのは、貸借対照表における左右対称、左右近郊の観にひかれてのものと考えられる。貸借対照表の観察から出発する学説あるいは概念規定は、貸借対照表三項目の均衡の概観にとらわれて、資産がすべての問題を解く鍵であるという真理から、自ら目を覆っているのである。かくして、著者は、これまで唱えられてきたいずれの学説にも同意しない。
企業の経済活動が、すべて、資産のみによって行われているのであるから、企業活動の諸局面たる生産活動(利益稼得)も財務活動(キャッシュフロー)も資産によってすべて説明がつくはずである。利益の計算要素たる収益と費用、キャッシュフローの項目たる負債と資本、これら他の四項目は、どのように資産から派生するのであろうか。この問題に答えることが、著者の資産動態論の中核である。