本書は、計画的・規則的な期間配分によって投資の成果をとらえる局面で求められる簿価の修正手続について、その意義と必要性を問い直したものである。初版の記述で改訂が必要な部分については個別修正を行わず、増補版で新たに設けた補遺(なかでも補遺1)においてまとめて言及することとした。そこではもっぱら、本書のキーワードでありながら初版では厳密な議論をし尽くせなかった、配分と評価との関係が改めて論じられている。
初版の記述に十分とは言えない部分が見出された一方で、初版の段階では今後の検討課題というにとどめた問題の一部が、この間の議論の蓄積を背景に漸次解き明かされたのも事実である。その典型例は臨時償却の手続と減損処理との関係であり、補遺2ではこの問題を論じている。
固定資産の減損処理を主題としている以上、増補版の出版に際し、会計基準をめぐる動向についての記述を追加することも検討したが、本書は会計基準の逐条解説を趣旨としておらず、むしろ具体的な基準と一定の距離を保ちながら、それを背後で支える基本的な考え方の整理・要約を目指している。これに加え、日本の減損会計基準は、本書初版の出版以前に公表されていた「固定資産の会計処理に関する論点の整理」で示されている基本的な考え方を踏襲している。基準を支える基本理念という次元でいうなら、新たに公表された減損会計基準は、初版の段階ですでに織り込み済みであったということができる。こうしたことから、増補版の御作成に当たり、新たな基準のために紙面を割くようなことはしていない。
減損会計が収益力を失った資産簿価の切り捨てと、それにみあう損失の計上を求めているのは事実である。しかし収益力を失った資産簿価のすべてが切り捨ての対象になっているのではない。また損失額も、直感的になじみやすい時価との対比をつうじて算定されるのではない。単にストック評価額のリアリティーを回復するためでなく、むしろ期間損益に一定の解釈を与えるために簿価切り下げが行われるという本書の解釈が、減損会計理解のための一助となれば幸いである。