本書は、ディスクロージャーと企業価値の関係を実証分析し、ディスクロージャーが戦略的に実施されることを明らかにしたものである。本書のポイントを示せば、以下のようになる。①ディスクロージャーを積極的に行う企業ほど、株主資本コストと負債コストなどが減少し、ひいては企業価値が増加する。②企業経営者は、それを見越してディスクロージャーを戦略的に実施し、裁量的な会計行動をとる。③開示された会計情報の有用性はここに差があり、特に、決算短信で開示される予想利益情報の有用性が大きい。④開示された財務諸表に信頼性を付与する仕組みが監査であるが、監査の品質は一様ではなく、監査法人の規模が監査の品質に関係している。
いずれも、ディスクロージャーの意義とディスクロージャー制度を検討する時に見逃せない点であろう。われわれは、実証研究で得た証拠に基づく建設的な議論が、より適切なディスクロージャー制度の構築に結び付くと考えている。特定の信念に依拠した議論は、ともすれば平行線をたどり、時間を浪費するだけで収束しない場合がある。やはり、理論と証拠が強固に組み合って、良質なディスクロージャー制度の構築を可能にするのであろう。しかし現在、ディスクロージャーに関する実証研究は少なく、制度設計の参考にするには心許ない状態である。本書が制度設計の一助となることを願い、さらに多くの実証研究が続くことを期待している。