本書は、17世紀後半から現在に至るフランス会計制度進展の軌跡を、国際化の潮流を基軸として研究した成果である。「会計規則の性能」という物的条件に「会計人の技能と信義」という人的条件を加味することにより、その時々の歴史的変革がフランス会計制度にもたらした意義を究明したものである。
フランス会計は、歴史的視座からはEC会社法指令を基軸として、フランス国内型会計(1673年~1966年)、フランス・イギリス調和化型会計(1966年~1983年)およびフランス国際型会計(1983年~現在)という3つに区分される。第1区分としてのフランス国内型会計は、地域的な不文の慣習法が支配する状況において、フランス固有の会計として形成されてきた。この中でも代表的な会計法が1673年商事王令(Savary法典)である。そして、この王令を実質的に引き継ぐかたちで、1807年商法(Napoléon法典)が全国画一的で会計規則の法体系として形成された。第2区分としてのフランス・イギリス調和化型会計は、イギリスが1973年に欧州経済共同体に加盟したことにより、従来のフランス・ドイツ型会計とイギリス型会計の調和化がなされた形で形成された。欧州共同体委員会は、加盟国における標準的な会計基準としてEC会社法指令を交付した。この指令は、加盟国の国内法として導入することが義務付けられた。第3区分としてのフランス国際型会計は、この指令を受けて国内法として制定されたものである。
上述のとおり、物的条件に人的条件を加味したかたちで、フランス会計は会計情報の質の維持と向上を確保しようとしたところに、その特徴が顕著に表れる。本書では、歴史的に変遷していく会計情報の作成目的という視点から、物的条件である会計規則の歴史的な改正を負いながら、人的条件である会計人の技能と信義が会計規則の適用時に与える影響を加味して基本原則の役割を解明した。3世紀半に及ぶフランス会計制度の変容の過程は、社会科学としての会計学にひとつのあり方を示唆するものである。