アメリカの会計基準設定過程では、営利組織の会計基準と非営利組織の会計基準がともに視野に収められているのが特徴的である。すなわち、現代会計基準論に大きな影響を与えた『基礎的会計理論』(ASOBAT)では、その意見と勧告は、非営利組織にも同じように適用できると表明されている。また、『財務諸表の目的』(トゥルーブラッド報告書)は、政府機関と非営利組織の財務諸表の目的を含んでいる。さらに、現在のアメリカにおける会計基準設定主体である財務会計基準審議会(FASB)は、営利組織(企業)と非営利組織の両組織にまたがる会計概念フレームワークおよび会計基準を設定している。FASBが定める非営利会計概念フレームワークおよび非営利会計基準は、多様な非営利組織に共通のフレームワークおよび基準として作成されており、日本の非営利会計が今後発展していく際に、貴重な示唆を与えてくれるものと考えられる。このFASBの非営利会計概念フレームワークの成立過程を方法論的かつ歴史的に吟味し、FASBの非営利会計諸概念の成立過程を検討することが本書の主要な目的である。
FASBの非営利会計概念フレームワークは、当初、営利会計概念フレームワークとは別個に、分離的概念フレームワークとしてその諸概念の研究が進められていたが、『財務会計諸概念報告書』(SFAC)第4号『非営利組織の財務報告の諸目的』での提言を契機に、両会計に共通する「統合的概念フレームワーク」作成に転じている。その結果、SFAC第3号『営利企業の財務諸表の構成要素』がSFAC第6号『財務諸表の構成要素』に差し替えられたのは、周知のことである。ところで、この統合的概念フレームワーク作成の試みをどのように評価すべきであろうか。学界では肯定的評価が支配的のようである。しかしながら、営利会計と非営利会計を共に研究対象とすることと、両者の概念フレームワークを統合することとは別である。統合的概念フレームワークを意図した結果、営利・非営利それぞれの会計諸概念のそれぞれの特徴を規定する重要な要素が失われてはいないだろうか。この統合的概念フレームワークの評価が、本書のもう1つの目的である。